チャーリー・ブラウン、なぜなんだい?


 ことの起こりはほんのちょっとしたきっかけであった。フィギュア王に連載しているコラムに軽〜い気持ちでこんなイラストを描いたのだよね。→
 この後やっぱし気になるので、スヌーピーアニメの吹き替え声優の事を調べ始めたら泥沼にハマってしまったのだ。

 まずはTVアニメ編。「ピーナツ」のアニメは1965年の「チャーリーブラウンのクリスマス」を皮切りに、だいたい年1、2本の30分番組として放映されるスペシャル番組なのだ。(この辺、なかなか独特の放送形態であるな)
 ただし「THE CHARLIE BROWN & SNOOPY SHOW」として、週1ペースTV番組として作られたアニメも18本あり、この2つが日本でもよく放送される、いわゆる「スヌーピーのアニメ」なワケだな。
 (本当はこの上に1時間スペシャルの「Snoopy: The Musical」やら、教育番組として制作された「THIS IS AMERICA, CHARLIE BROWN」とか、ビデオオリジナルの「It Was My Best Birthday Ever, Charlie Brown」とかもあるんだけど、まぁ今回はいいか。)

 で、吹き替え声優なんだけど、最初にNHKに放映された時が、「チャーリーブラウン(以下C・Bと略):谷啓/ルーシー:うつみ宮土理/ライナス:小宮山清または野沢那智」のファーストバージョン。私と同世代の人にとっては「スヌーピーのアニメといったらコレ!」なハズ。この時はアメリカと同じく、日本でも夏休みとか冬休みに単発放映されるスペシャル番組だったのだ。おそらく70年代の初め頃から放映されていたと思うけど、資料不足で正確な放送日時までわかんないや〜。さーて77年にいったんこのバージョンは、東京12チャンネルにまとめて売られ、週1番組として通常放映されたのだ。その後サンテレビとかのローカルUHF局にフィルムはドサ回りしてた模様。
 その後80年代に入ると、アニメの放映権が再びNHKに戻り、旧作も含めて「C・B:なべおさみ」で吹き替えしなおされて放映。これは確か、なべおさみが息子(なべやかん)の不正入学事件が発覚して、芸能界謹慎処分になる頃まで続いたハズ。
 この頃からビデオソフトも学研などから販売されているが、吹き替えは谷版でもなべ版でもなく、「C・B:杉山佳寿子/ルーシー:三輪勝恵/ライナス:伊倉一恵」という新録音バージョン。でもって90年代に入るとビデオの発売がポニーキャニオンに移行。しかーし、吹き替えはまたまた変更されて、子役を使ったバージョンに一新。原語版でも声優ではなく、本当の子供を使っているので、一見正しいとも思えるのだが、アチラは先に声を録音して作画するプレスコ方式。だから日本での吹き替え時に、アフレコ方式で子供を使うと、やっぱしセリフがたどたどしくて聞いててイライラするのじゃ。残念ながら現在、レンタルビデオで観られるのはこの「ポニキャンバージョン」なので、一応リストアップしとくね。

PCVP11283 スヌーピー誕生!/Snoopy's Reunion (1991)
PCVP11284 スヌーピーは名探偵!/It's a Mystery, Charlie Brown (1974)
PCVP11285 スヌーピーのこわい夢/What a Nightmare, Charlie Brown (1978)
PCVP11286 スヌーピーのメリークリスマス/A Charlie Brown Christmas (1965)
PCVP11287 スヌーピーはお医者さん?/Why, Charlie Brown, Why? (1990)
PCVP11419 スヌーピー、恋はつらいね/You're In Love, Charlie Brown (1967)
PCVP11420 スヌーピーのコンピューターゲーム/THE CHARLIE BROWN & SNOOPY SHOW(1985)
PCVP11421 スヌーピーとかぼちゃ大王/It's the Great Pumpkin, Charlie Brown (1966)
PCVP11422 スヌーピーは宇宙飛行士/THIS IS AMERICA, CHARLIE BROWN The NASA Space Station(1988)
PCVP23114 スヌーピーのマジックショー/It's Magic, Charlie Brown (1981)
PCVP11689 スヌーピーとチャーリー・ブラウンのクリスマス物語/It's Christmastime Again, Charlie Brown (1992)
PCVP11690 スヌーピー、結婚するの?/Snoopy's Getting Married, Charlie Brown (1985)
PCVP11691 スヌーピーのたのしい庭づくり/THE CHARLIE BROWN & SNOOPY SHOW(1985)
PCVP11681 スヌーピーの野球ゲーム/It's Spring Training, Charlie Brown (1992)
PCVP11682 スヌーピー、あの子をさがして!/Someday You'll Find Her, Charlie Brown (1981)
PCVP11683 スヌーピーは優等生/THE CHARLIE BROWN & SNOOPY SHOW(1985)
PCVP11901 スヌーピーとチャーリー・ブラウンのスポーツ大会/You're the Greatest, Charlie Brown (1979)
PCVP11902 スヌーピーのサーカス/Life is a Circus, Charlie Brown (1980)
PCVP11903 お引っ越しだって?スヌーピー/Is This Goodbye, Charlie Brown? (1983)
PCVP11961 いたずらスヌーピー/He's Your Dog, Charlie Brown (1968)
PCVP11962 たよりないねチャーリー・ブラウン/THE CHARLIE BROWN & SNOOPY SHOW(1985)
PCVP12032 スヌーピーのスケートレッスン/She's a Good Skate, Charlie Brown (1980)
PCVP12033 ライナスは生徒会長!? /You're Not Elected, Charlie Brown (1972)
PCVP12072 スヌーピーのモトクロス大会/You're a Good Sport, Charlie Brown (1975)
PCVP12073 スヌーピーの木をうえよう!/It's Arbor Day, Charlie Brown (1976)
PCVP12074 スヌーピーとパーティークィーン/It's Your First Kiss, Charlie Brown (1977)

 私的にベストの「恋するヒマもないよC・B/There's No Time for Love, Charlie Brown (1973)」とか、「C・Bのバレンタイン/Be My Valentine, Charlie Brown (1975)」とかがリリースされてないのが残念ですな。この中でオススメ作品は、原作ファンの方には「THE CHARLIE BROWN & SNOOPY SHOW」もの。単純に1本のアニメとしての完成度でいうと「あの子をさがして」「こわい夢」「名探偵」「生徒会長」あたりでしょうか? ただし、「名探偵」はクライマックスの裁判シーンのややこしい法廷用語会話がミソなので、子役版だと面白味が半減するんだよなぁ。「生徒会長」のライナスの演説シーンなんかも同様。

 さてさて、一方テレビ放映は96〜97年にかけて、NHK−BS2で過去30年の「ピーナツ」アニメ51本が、またまた別の子役により新吹き替えされて放映されたのだ。まぁ、このバージョンでしか見れないエピソード〔例:Happy New Year, Charlie Brown (1986)〕とかもあるので贅沢は言えないけど、やっぱし演技レベルがちょっとなぁ。現在、衛星多チャンネルの「カートゥーン・ネットワーク」で放映されているのもこのBSバージョン。うーん、旧作だけでもいいから谷啓版をビデオリリースしてくれよう。DVDの吹き替えとかがどうなるのか、とっても心配。

 次に映画版。ピーナツの劇場用アニメは全4本。しかーし、この吹き替えが調べ始めると実に複雑怪奇なのだよ。まずはリストアップ。

「スヌーピーとチャーリー」A Boy Named Charlie Brown (1969)
「スヌーピーの大冒険」Snoopy Come Home (1972)
「がんばれ!スヌーピー」Race for Your Life, Charlie Brown (1977)
「スヌーピーとチャーリー/ヨーロッパの旅」Bon Voyage, Charlie Brown (1980)

 まず第1作目「スヌーピーとチャーリー」は字幕版と吹き替え版双方が劇場公開され、この時の配役は「C・B:野沢雅子/ルーシー:平井道子」版。東宝東和配給。
 その後、84年に角川アニメ「少年ケニア」の併映作品としてリバイリル公開されたんだけど、この時のバージョンはズタズタにカットされた短縮版(怒)で、吹き替えは「C・B:松岡洋子/ルーシー:小宮和枝」による新録音。
 ビデオは最初は松竹から、その後フォックスホームエンタテイメントから廉価版でリリースされているので、今でも割と簡単に入手可能。吹き替えは野沢バージョン。
 LDは87年にレーザーディスク社から発売。なお、ややこしい事にジャケット裏面には「C・B:松岡洋子」と記載されているのに、中身は紛れもなく野沢版! たぶん、角川公開時の資料を元にしたせいの単純ミスだと思うのだが。
 ちなみにビデオ、LDともに劇場公開時にはあった「ルーシーの精神分析」のくだりが、なぜかカットされている。(具体的に言うと、「チャーリーの欠点をスライド上映」した後の、「フットボールを蹴り損ねる」定番ギャグのシーン。これがラストシーンの伏線になっているので、カットのあるなしで映画全体の印象が変わってしまう)アメリカのピーナツ関係のサイトなどを見ると、向こうのビデオもそうなっているらしいので、これは日本の発売元の責任では無いようだ。どうもアメリカでのTV放映時にカットされたフィルムがマスターになってるせいらしくて、DVD発売時にはちゃんと完全版に戻してくれんかのう。
 続く「スヌーピーの大冒険」と「がんばれ!スヌーピー」の2本。劇場公開時は「C・B:野沢雅子」版。ビデオ・LDは「C・B:古田信幸、ルーシー:滝沢久美子」による新録音版になっとります。最後の「ヨーロッパの旅」は日本では劇場公開されず、ビデオリリースのみ。吹き替えはこれも古田信幸。ちなみに内容的には「チャーリー」「大冒険」が圧倒的に面白く、後の2本はいまいちかな。

 ここまでやって、一応ピーナツ・アニメの吹き替えバージョン調査は一段落、と思ったら甘かった! 「スヌーピーとチャーリー」は「チャーリーブラウンという名の男の子」、「スヌーピーの大冒険」は「帰っておいで!スヌーピー」という別タイトルでTV放映されたらしいのだ。でもって、この時の吹き替えがまた別バージョンらしいのよ〜。ひえええ〜(泣)。一応「帰っておいで!」は「C・B:坂本千夏/ルーシー:渕崎ゆり子」というトコまで突き止めたのだが、「男の子」の方がわからん。さらに「がんばれ!スヌーピー」は、「がんばれ!スヌーピー大旋風」という別タイトルでビデオ発売されたという未確認情報もあるし、コレの吹き替えがどうなってるのかも気になってしょうがない。誰か知っている人がいたらぜひ教えてほしい。判明したからってどうなるものでもないのだが。

 …と、書き連ねてみたが、興味の無い人には本当にどーーーーでもいいハナシだねぇ、コレ。商業誌のコラムとかには使えないネタなので、せめてこの本に書いてウサ晴らししよっと(笑)。

【付記】
 Pac氏のサイト「SNOOPYの本 とあと少し」の情報によると、2000年1月にCSのパワームービーで「チャーリーブラウンという名の男の子」と「帰っておいで!スヌーピー」が放映されたが、「男の子」は「C・B:野沢雅子」バージョン。しかもビデオと違ってノーカット版。
 「帰っておいで」は「C・B:古田信幸」バージョンだったそうだ。更に謎は深まる…。

【付記2】
 その後、スヌーピーの吹き替え版に関して、ほぼ完全解析したスゴいサイトを発見(02年11月)。ここを見ればすべてがわかる!→"LOCAL CACTUS CLUB"


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