眠田直のこんなモノが欲しい!(11)

30代オタクが応接間に飾る絵



 まぁこーゆー趣味の人間の一人として、私の部屋もご多聞に漏れずアニメのポスターやセル画、あとスタートレックのカレンダーやら声優さんのサイン色紙なんかがベタベタと貼られているわけなんだけど、最近「もう少し落ち着いた部屋にしたい」という願望も出てきてるんですよ。
 いや、若いウチはいいんだけどね、部屋中アニメのポスターでもさ。でもセル画って、元来フィルム上で動かしてこそ見栄えのする絵であり、飾って鑑賞する為に描かれたモノではないから、色合いは原色ギラギラでキッツいし、絵の具もベタ塗りだから、どうしても「深み」には乏しいのだな。てなわけで30過ぎの老オタクとしては、もう少し「渋い!」絵も欲しくってきてねぇ。
 しかし、ちゃんと額縁に入れて飾るような立派な絵画となると、なかなかオタク趣味を満たしてくれるモノは少ないのだよ。ラッセンの「媚びたイルカ絵」なんて、死んでも家の中に掛けたくないし、ユトリロの複製ってのもあまりに普通すぎてイヤだ。掛け軸を掛ける床の間も無いし、だいいち物欲いっぱいのオタクにはワビサビの世界は似合わないよね。

 …と、なると、我々が応接間に飾ってサマになる絵というのは、もう小松崎茂大先生のサンダーバードや大和、それにタイガー戦車や未来世界画ぐらいしか無いのだな、コレが。
 小松崎先生の絵は、とにかく躍動感に溢れすぎなトコロが涙モンです。画集を見ても、静止しているメカの絵はホントに少なくて、大和もゼロ戦もロケットも、かたっぱしから火ィ噴いたり機銃撃ったり煙出したりしてるしぃ。
 個人的には「空中弾丸列車」の絵が欲しいんだけどな。もちろん戦時中に描かれた「機械化」の架空兵器図なんかも捨てがたいけど。
 または名著「怪獣大図鑑」の南村喬之大画伯の絵も、趣味人の家にはふさわしいでしょう。未来的でスタイリッシュな小松崎先生と比べ、土俗的なタッチと独特の色使いがたまらなく魅力的。
 南村画伯の怪獣画は映画のスチールに忠実に描いたモノと、独特の解釈で描かれたモノと2タイプあるんですが、後者の方が断然イイです。 特に元の映画と色も形状も全然違う「象をさらうラドン」とか、実際にはありえない夢の組み合わせ「モゲラ対アンギラス」なんかの絵は、ぜひ玄関に飾りたいもんです。
 メカ、怪獣と来たら次はやはり人物画。…となれば、やはり石原豪人先生しかありますまい。豪人先生特有の、色っぽくて濃ゆ〜い顔の美人画を寝室に掛けるといい夢が見れそう。
 あー、どっかの画商さま、これらの先生方の絵のレプリカを販売していただけませんかねぇ。私らの世代はなんせ幼少期に、少年マガジンの大図解やら怪獣図鑑なんかでこういう絵を脳裏にインプリンティングされちまってますから、もう絶対に「買い」まっせ。
(原画はそれぞれ貴重な文化遺産として、専用の美術館に保存されるべし、と思ってるんで個人所有したいという欲求は無い)

*追記=この原稿を書いた直後の事。石原豪人先生は去る6月20日にご逝去されました。ご冥福をお祈りします。


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