眠田直のこんなモノが欲しい!(21)

わが青春の山田くん



 1999年7月10日、スタジオジブリ最新作「ホーホケキョ/となりの山田くん」公開。

 …不安だ、ものすごーーーく不安だ。なんせ「魔女の宅急便」やら「おもひでぽろぽろ」など「原作クラッシャー」としては前科の多い、あのスタジオジブリ作品である。今、劇場で流れている予告編を見る限り、二十年来のいしいひさいちファンである私としては、いったいどんな映画になるのやら、怖くって怖くって仕方が無い。

 監督が芝山努かやすみ哲夫だったら、もっとワクワクしながら公開を待てるのになぁ。

 さて「ファン」という言葉を使ってしまったが、私にとって「いしいひさいち」とは単にファンとかそういうレベルをはるかに越えて、「自分を形成するそのもの」に近い。
 初めて書店でいしいひさいちの単行本を手にした時の衝撃は忘れられない。

 「4コマ漫画で、こんなに面白い事ができるのか!?」

 「サザエさん」以来、進化の止まっていた日本の4コマ漫画を、一挙に改革したのがいしいひさいちだったのだ。だいたい昔は4コマ漫画専門誌なんて無かったのだぞ。

 私の漫画自体、いしいひさいちの模写から始まっている。絵、描き文字、セリフ、ふきだしの形、正直言ってすべていしい漫画の影響下にある。さらにはギャグの出し方、ネタのヒネリ方、物の見方、つまり「作品の作り方」そのものを教わったと言っても過言ではない。私の持っている「バイトくん」「タブチくん」「おじゃまんが」などの初期A5判単行本は「教科書」として何度も読み返したので、かなりボロボロな状態だ。

 それだけではない。「本の編集」を練習したのは、感激の余り作った「いしいひさいちFC」の会誌作りだったし、「企画書の書き方」を身につけたのも、FCを主宰していたので入手できた、TV「おじゃまんが山田くん」の企画書を何度も何度も熟読したからだ。またその縁で「山田くん」の脚本を二本ほど書かせてもらい、シナリオデビューまでさせてもらった。(今とは違うペンネームだから、放映リスト見てもわかんないよ)
 現在、私がやっている仕事のルーツは、ほとんどいしいひさいちに繋がっている。その存在は大きすぎて、客観的に語る事は難しい。今回の原稿なんか、いつもと文体が変わっちゃってるしな。

 …と、いうわけで今回の「こんなモノが欲しい」は非常に具体的。いしい漫画は発行部数が多いので、初期の単行本でも、古書店で割と簡単に入手できるのだが、唯一の例外がチャンネルゼロ工房発行のミニコミ(同人誌)版「Oh!バイトくん」である。全3巻中、74年発行の1巻が特にレア品。私も長い間探し求めているのだが、未だに入手できずにいる。読者の皆さんの中でもしこの本をお持ちの方がいたら、ぜひ譲っていただけないだろうか? プレミア値段でも構わない。私にとってはなんとしても手に入れたい「幻の本」なのだ。
(文中敬称略)


《《前へ  《コラムのページに戻る》  》》次へ

》》》トップメニューに戻る