眠田直のこんなモノが欲しい!(32)

玄界灘に立つ虹



 ベリカードって知ってる?

 あれは今を去る事25年前。ソニーのスカイセンサーと、ナショナルのクーガという、歴史に残るラジオの名機が発売され、若者の間に海外の短波放送を聞く「BCL」という趣味が、熱病のように流行った事があったのだ。
 なんせインターネットなど無かった時代の話。家に居ながらにしてドイチェベレやら北京放送やらアンデスの声やらの日本語放送が聞けるという、「世界中と繋がってる感覚」がどれほど魅力的だった事か。
 で、そのような海外の放送を受信したという「報告書」を書いてその局に送ると、御礼として返送されてくる絵葉書が「ベリカード」なのだな。これがまぁ、南洋の国なら南国調の、共産圏のはお堅い感じ、バチカンのは荘厳な雰囲気、というように紙質・デザイン・写真・イラスト・文字にお国柄やら放送局の個性出まくりで、集め始めるとたまらなく楽しいモノだったのだ。カンガルーとかカワセミの写真使ってたラジオ・オーストラリアのカードなんて、凄い人気だったなぁ。
 さらに日本では電波状況的になかなか受信できねぇとか、担当者がいい加減でたまにしかカード送らない南米の局とか、いろんなパターンの「レアカード」があって、コレクション魂をくすぐるんだよね。

 また、深夜放送が好きな人なら知ってると思うけど、夜間には電離層の影響で短波でなく中波だって遠くまで届くのだ。そんなワケで、主に国内の放送局のベリカードを集める派もいて、私はもっぱらこっちだったなぁ。当時、まだ中坊だった私でも、北海道放送やらFM愛知やら宮崎放送のカードを苦も無くゲットできたしね。これがまた仙台放送のはこけし、福井放送は越前カニ、九州朝日放送は博多人形とか、ご当地名物のデザインが多くて嬉しいのだ。ちなみに日本テレビのは、あの放送終了時に出てくる怖い「鳥」だぞ。

   この国内局カード集めってのも奥が深くて、3カ月に一度デザイン変更する静岡放送のカードを全部揃えようとか、テレビ朝日に社名変更する前の「NET」のカードとか欲しい、とかになってくると他ジャンルと同様、険しいマニアの道が待っておりました。私も最終的には、標準電波発信局JJYとか、航空情報専門の東京ボルメット放送とか、返還後も数年間稼働してたボイス・オブ・アメリカの沖縄支局のカードまで集めたもんなぁ。中学時代からコレかい。

 さてさて時は流れ、BCLブームの終焉と共にすっかり廃れちゃったベリカード集めですが、WOWOWとかの新規局でも、今もちゃんとカードを発行しているのだな。

 でね、「こんなモノ欲しい」的に不満なのは、ベリカードを扱ってくれるショップって無いし、インターネットオークションにも全然出ないって事なんだよね。なんせ放送局、または国家自体が無くなっちゃった東ドイツのラジオ・ベルリンとか、幻のカードがゴロゴロしてる世界だって言うのになぁ。


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