眠田直のこんなモノが欲しい!(55)

失われた世界



 来年の4月で「宝塚ファミリーランド」が閉園する。子供の頃から親しんだ遊園地が無くなる、というのはとても寂しい気分になるものだ。

 ここの遊園地は動物園も兼ねていて、入り口近くにある「立体動物園」という施設はなかなか楽しい。3階立てのビルの中に「鳥」「水棲動物」「夜行性動物」などが展示されていて、登り降りしながら見て行くという水族館的な形式。室内型動物園というのは珍しく、熱帯の鳥など、温度管理が必要な動物には適していると思う。
 ただ、ファミリーランド自体は阪神大震災の後に、実はかなり改装されてしまい、私が子供の頃に一番好きだったスポットである「恐竜館」や「昆虫館」は五年前に行った時には、既に無くなっていた。
 恐竜館は、昭和47年のイベント「恐竜博」が好評につき常設展示になったもの。今ではよくあるロボット恐竜による大パノラマ、だったのだが、時代を考えると日本ではかなり元祖の部類では無いか? しかもこの恐竜館の建物自体が、日本万国博の三菱未来館の移設だったらしい。おおお!
 昆虫館は標本を展示してあるだけの、遊園地としては地味な施設だったのだが、かの手塚治虫先生が少年時代に足繁く通ったという場所。うむむむ、色々と歴史的に重要なモノがあったんだなぁ。

 しかし最近は不景気のせいか、横浜ドリームランドとか向ケ丘遊園とか、営業を終了する遊園地が多いね。存続してるトコでも、シーラカンス標本で有名だったよみうりランド内の水族館はいつの間にか無くなってるし。

 いや遊園地だけではない。ここ10年くらいの間に我々が失ってしまった「場所」は結構多いのだ。例えば大阪球場に川崎球場に平和台球場。西宮球場も改装されてしまい、もうここでプロ野球を観る事は出来ない。

 そして名画座の衰退を嘆く人は多いが、シネコンの台頭で、千席以上ある「大型映画館」もまた、いつの間にか姿を消しているのにお気づきか? テアトル東京もOS劇場も中日シネラマももう無いんだよ。思えば梅田のOS劇場で観たのは「幻魔大戦」とか「エンティティー霊体」とか、別に大画面で無くてもいいような映画ばかりだったなー。いや、当時は「ココが無くなる前にシネラマを体験しておこう」なんて思いもよらなかったし。

 本や玩具は個人でも保存できる。でも「場所」だけは保存が効かない。無くなったら、それでおしまいなのだ。そのくせ、存在してる間はそれがあたり前に思えて、貴重だなんて思わないものな…。晴海のガメラ館とかね。
 写真やガイドマップ、残った半券とかで在りし日の姿を思い浮かべる事はできるけど、もうちょっと本格的に「場所の保存」って出来ないものかな? ほら「バーチャルリアリティ」とかでさ。「大阪球場で南海ホークスの試合を体験できる」なんてプログラム作ってくれたら、あのマヌケなヘルメットとグローブ姿も我慢するよ、オレ。


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