5分でわかるトゥーンの歴史(2)

 日本初のTVアニメが「鉄腕アトム」である事は有名だが、では世界で最初のTVアニメは? …と聞かれて答えられる人は少ないだろう。答えはジェイ・ウォード作の「進め!ラビット」(1949年)。
 もっともこの作品の名を知らなくても無理は無い。アメリカンTVアニメの代表と言えばやはり「チキチキマシン猛レース」「大魔王シャザーン」「スーパースリー」のハンナ・バーベラ・プロダクションだからだ。

 かの「トムとジェリー」を産み出したクリエイター、ジョセフ・バーバラとウィリアム・ハンナのコンビが、MGM漫画映画部門の縮小に伴い、独立して1957年に設立したのがこの会社。この時、実質的にカートゥーンは映画からTVの世界に転身したと言えよう。
 TVでの初仕事は「強いぞ!ラフティ」。続いて「珍犬ハックル」「早射ちマック」とヒットを飛ばし、1960年の「原始家族フリントストーン」ではついにゴールデンタイムに進出。その後も「宇宙家族ジェットソン」や「クマゴロー」「スカイキッドブラック魔王」など300本を越えるシリーズを世界中に送り出した。…とまぁ、前述のジェイ・ウォードやフィルメーションなど、いくつかのライバル会社は存在するものの、ハンナ・バーベラの社史がそのままTV用トゥーンの歴史である、と述べても過言ではない。

 さて映画とTV用トゥーンの大きな違いは、…その製作期間と予算にあったりする。MGM時代は半年かけて7分の「トムとジェリー」を作っていたハンナ・バーベラも、TVとなれば毎週1回30分のアニメを作らなければならない。そこで否応無しに採用した方式が、動きを抑えて作画枚数を節約したリミテッドアニメーション。実際に初期のTV用作品を見てみると、動きよりセリフでのギャグが多くなり、手間のかかるアクションはカメラフレーム外にして効果音だけで処理するなど、かなり苦心して演出しているのが判る。
 なお、日本製TVアニメとの大きな違いは、我が国の作品が「原作漫画の絵をそのまま動かしたい」という欲求に沿って進化したのに対し、アメリカのリミテッドアニメはそもそも“グラフィックデザイン的な表現を追求したい”という芸術的な方面から生み出された手法であるという事。

 TV時代に入り、かつての贅沢な枚数をかけた“動きの魅力”を失ったハンナ・バーベラが、新たに手に入れた力がこの「デザイン感覚」だ。だからハックルもマックも、ギャグやお話の内容的には古びても、キャラクターそのものの描線・配色などのグラフィックデザイン面においては、今見ても非常に洗練されている。(現にアニメ自体を知らない若い世代にも、ケンケングッズが売れている)

 さてパワーパフガールズを製作したカートゥーンネットワークスタジオも、ハンナ・バーベラプロの流れを組む会社。つまりガールズの大胆にして魅力的なデザイン、卓越したグラフィックセンスなどは、この様にアメリカンTVアニメの伝統であり、“素敵な”長所なのだ。


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