5分でわかるトゥーンの歴史(3)

 アメリカの地上波テレビ局の、特に子供向け番組に対する“規制”は大変厳しい。

 エロスを感じさせてはダメ、過激な暴力シーンはダメ、人が死ぬなんてもっての他。 だから1975年にハンナ・バーベラ・プロが、TVアニメとして「新・トムとジェリー」を復活させた時も、「内容が暴力的だ」とされて往年の過激なドタバタを影を潜め、2匹は常に仲良しコンビで少しも争わないという、骨抜きな内容に成り下がっていた。実際、この頃を境にさしものハンナ・バーベラ作品も、刺激の薄さに子供たちに飽きられていく。

 そんな折、初めてTVアニメの世界でアメリカに対抗するライバルが出現する。それが他でもない我が国、日本である。子供向けアニメにもテーマやドラマ性やリアリズムを盛り込んだ「科学忍者隊ガッチャマン」「宇宙戦艦ヤマト」「超時空要塞マクロス」等が続々と輸出され(もちろん米放送コードに合わせて再編集され、改竄された形ではあったが)、ワンパターンのTVトゥーンに飽きていたマニア層や、米アニメ制作者には大きな衝撃を持って迎えられた。その後80年代の米TVアニメ界二大ヒット作が、合体変形ロボットが活躍する「トランスフォーマー」と、忍者&空手が題材の「ミュータント・タートルズ」という、どちらも日本文化の影響化にあるものだという点に着目してほしい。また当時は“ゲーム”という形でも「スーパーマリオ」「ゼルダの伝説」「ソニック」といった日本生まれのキャラクターがアメリカの子供たちの間に浸透していった時期なのだ。
 そして90年代。特撮では「パワーレンジャー」、アニメ&ゲームでは「ポケモン」の超大ヒットで、日本製ポップカルチャーの輸出は頂点に達したと言ってよいだろう。

 この日本からの影響が良い刺激となったらしく、長らく内容的に停滞していたTVトゥーンにも新しいタイプの作品が登場し始める。まずはスティーブン・スピルバーグがプロデューサーとなって、「タイニー・トゥーン」「アニマニアクス」「ピンキー&ブレイン」といった古き良きトゥーンへの回帰的な作品を世に送り出す。ことに「タイニー」はワーナーのルーニー・チューンズの現代風リメイクといった意味合いが強い。また「ザ・シンプソンズ」「サウスパーク」といった、毒の強い大人向けギャグアニメも登場した。

 そしてハンナ・バーベラ・プロの伝統は、カートゥーンネットワークスタジオへと引き継がれた。衛星局のカートゥーンネットワークでは、ついに地上波の厳しい規制という呪縛から逃れ、ドタバタもパロディもキツいギャグもやり放題。若手スタッフの活躍もあり、「デクスターズラボ」や「カウ&チキン」といった新世代のトゥーンがここに誕生したのだ。その流れに乗り、トゥーン専門チャンネルのオリジナル作品という甘〜い“お砂糖”な土壌に、「日本アニメの影響」という“ケミカルX”が加わって誕生したのが、これからあなたがこのBOXでご覧になる究極の傑作、パワーパフガールズなのである。ご堪能いただきたい。


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