“特撮魂”

 「パワーパフ ガールズ」は日本アニメの影響を受けたカートゥーン、とよく言われている。
 なるほど、その指摘もあながち間違いでは無いだろう。女の子が主人公である事、クールよりも「プリティ」さを前面に押し出した魅力、時々見せる「泣かせ」の入った展開、いずれも日本製アニメの十八番だ。
 だがよく注意してみると、アニメよりもっと強烈に「パワーパフ」の根底に感じられる日本の魂がある。それはゴジラやウルトラマンといった「特撮」の魂だ。

 まずは宿敵モジョ・ジョジョから見てみよう。“賢い猿が最大の敵”という設定は「宇宙猿人ゴリ(スペクトルマン)」(71'ピープロ)だし、彼の帽子のデザインは「ザ・カゲスター」(76'東映)がモチーフだ。その上、帽子を取ると脳ミソがムキ出し、というのは「人造人間キカイダー」(72'東映)の宿敵、ハカイダーを連想させるではないか。
 カレも単純な西洋風の悪魔ではない。なんせ手がハサミになってるのだ。これは「ウルトラマン」(66'円谷プロ)のバルタン星人や、「帰ってきたウルトラマン」(71'同)のサドラーなど日本の怪獣にしか見られないモチーフ。ティム・バートンの「シザーハンズ(90')」も手がハサミだけど、カレの手は明らかにバルタン似である。

 更に大量に出現するモンスター達に至っては、もっと影響が顕著。このブロッサム缶に収録されたエピソードの中では、「たいせつなもの」の、ヘビの化け物の元イメージはキングギドラからだろうし(少年ナイフの歌でも「三つ首モンスター」となっている)、二匹目の怪獣もガメラ調だ。「早くねなさい!」に登場する怪獣はウルトラ怪獣のギャンゴそっくり。
 この後も「カッコよくなりたい!」の回にはヘドラに似た怪獣が登場する。しかも彼らが、海の向こうの「怪獣島」からやってくるという設定は「ゴジラの息子」(67'東宝)から「ゴジラ対メガロ」(73'同)の頃のゴジラシリーズで使われていたものだ。
 そして「巨大ロボ!ダイナモ登場」の回に登場する日本人街。この背景、実際の日本の街ではなく、怪獣映画のスチールを参考にして描いた疑いが濃厚。なぜなら、何度が画面に登場する丸い建築物は、最初の「ゴジラ」(54')のポスターやスチール写真にタイアップで描かれていた「森永ミルクキャラメル」の広告塔そっくりではないか。
 ついでに「怪獣より味方の攻撃で街に損害が出る」というシチュエーションも「八岐之大蛇の逆襲」(85'DAICONFILM)と共通している。

 それにしても、アチラでも怪獣の代名詞になっているゴジラや、当時アメリカにもフィルムが輸出されていたウルトラマンやスペクトルマンはわからないでもないが、「カゲスター」なんて日本でも「知る人ぞ知る」マイナー作品だぞ。パワーパフのスタッフの中によっぽどの日本特撮通がいるのだろうか? 

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