ネット恋愛のしくみ


 メル友、趣味の友達、そして恋人探し…。みなさん、ネットでいい出逢いありましたか?

 てな感じでインターネット雑誌では「ネットで素敵な恋を見つけよう!」みたいな記事が花盛りですな。まぁネットって、ボーッと出来合いのHPを見てるだけより、モニターの向こう側に生きた人間がいるって事を感じられる時が一番面白いのであって、私もその魅力はよくわかってるつもりだよん。
 ただねぇ。ネットでの出逢いってのは、現実の恋愛とちょっとだけ違っていたりするのだな。この辺を普通のネット雑誌はあんまし書いてくれないので、ちょいと考察してみようか。

 ネットで異性と出会うキッカケってのは、チャットだったりメル友募集の掲示板に書いたりとか、あとこの本の読者のみなさんだと、趣味のHPで作者に感想のメール送ったりとか、オークションで品物のやりとりして、とかもあるかな?

 こういう場合、いずれも初対面は「字」によるメッセージのやりとりになるわけだね。相手の姿形とか、声や話し方とか、雰囲気やら匂いとか、そういうモノを一切排除して、言葉だけが純粋にやりとりされるのだ。
 実はこの文字コミュニケーションの「純度の高さ」ってのが案外クセモノなんだ。えーと、ほらよく掲示板とかで、ささいな事から論争になったり、大ゲンカしちゃう「ネットバトル」って見た事無い? 直接会って話してたらバトルにならないような事でも、ネットでは熱くなりやすいみたいなんだね。これを「もっとモラルを高く」とか「マナーやルールを守ろう」って論法で解決しようという意見は、パソコン通信の時代からあるんだけど、どうもそれだけではうまく行かないみたい。
 つまるところ、文字だけの会話というのは、意外と人間を感情的にさせやすいのだな。まるで心にモデムが直接繋がっているみたいに。実際に掲示板とかで、自分に対する悪口書き込みを見つけたりすると、思った以上に精神的ダメージ食らうぞ。現実のケンカだと、カッと怒った後はサッパリするのだけど、ネットの場合は心にじわじわと染み込んでくる感じ、って言えばわかってもらいやすいかな?

 この「心にじわじわ染み込んでくる」感じが、悪い方に働くとネットバトルになるけど、良い方向に働くと「ネット恋愛」になるのだな。たとえば、無味乾燥な仕事メールの山に、好感を抱いてる異性からの私信メールが一通入ってると、なんだかとってもホッとした気分になるしね。こうして人は恋に落ちちゃったりするのだ。
 その上、ネットでの出会いって、ものすごく守備範囲が広いのだ。文字だけの世界だと先入観にとらわれないので「通常ならありえない選択肢」からも相手を探せちゃうからね。たとえば現実世界で出会ってたら「おじさん」あるいは「ガキ」として、絶対に恋愛の対象にはならない年上・年下の相手と仲良くなってしまう事だってあるし、ネットは時間に捕らわれないから、本来は出会う機会の無い、夜勤の看護婦さんと昼間お勤めの公務員だって、メールでなら無理なくやりとりできるのだな。
 それから、言葉の壁があるから「世界各国」とは言わないまでも、北海道に住んでるキミが、沖縄の女の子に惚れちゃう事もあるかもしれない。 で、さすがにこれだけレンジの広いと、キミとフィーリングの合う相手が必ずいるのだ。

 さてさて、そんな風にキミもうまく誰かと巡り会い、まだ見ぬあの子も、運良く貴方の事を気に入ってくれたとしよう。ここで注意すべきネット恋愛の特徴は「進展スピードがめちゃくちゃ早い」という事だ。
 もともとメールやチャットというメディアは、そのシステム的にナイショ度が高い。普通では話せないような悩みとか個人の秘密とかも、打ち明けやすい雰囲気なのだ。その上、ネットで知り合った相手というのは、家族や仕事上の友人と違って、現実的な関わりが薄いから、秘密を暴露しても「あとあと面倒が生じない」というキラクさがあるのだ。
 でも、さっき言ったように文字だけの「純度の高い」世界でコレをやるとどうなるか? お互い、どんどん本音で話すようになり、親密度が加速度的に増していっちゃうのである。プラス、顔が見えない分、ついつい相手の事を「自分の理想のイメージ」にしてしまいがち。
 こうなったらもう誰も己の感情に逆らえない。人にもよるけど、ネットでは出会って1週間で熱愛状態になるのもよくあることなのだ。判定基準ですが「1日に3往復以上メールのやりとり」をするようになったら、かなり危ないですな。(携帯メールの場合は10往復)

 ここまで盛り上がってしまうと、後は自然と「一度、直接会ってみようよ」という展開になりますね。まぁ「会ってみたら全然イメージと違ってた、ガックリ」というありきたりなオチが付く場合もありますが、「会ってみて好印象だった」場合はもう歯止め、何も無し。なにせそれまでに、メールとかでお互いがどんな人間かという情報交換をほぼ終えてるし「ずっと前から友達だったみたいだね」ってな心境に陥りやすい。だから「初めて会ったその日のうちにSEXまで」って事も決して珍しくないのだな。
 更にさっき書いたように「北海道=沖縄」間とかで遠距離恋愛していた場合は「この機会を逃したら…」という心理も働くから、ますますそうなってしまいがちだぞ。恋の炎は物理的障害があるほど燃え上がるものだし。

 しかーし、どんな事にメリットがあればデメリットもある。「進展スピードが早い」って事は、恋に落ちるのも早いけど、醒めるのもまた早いっていう事だからね。
 恋が終わる理由はいろいろあるけど、当事者の片一方が熱愛のあまり、オーバーヒートしすぎてもう片方が引いちゃう、とかが多いかな。この場合は振られた方がネットストーカー化しやすいので要注意。ことにそれまでの恋愛の過程で、いろいろ個人情報を相手に漏らしている場合は危険度高いですな。

 もう一つは「相手を束縛するのが難しい」って事。前述したようにネットでは幅広く出会いの機会があるワケだから、「今の相手よりもっと気の合う相手」と巡り会っちゃう危険も常に存在するのだ。
 もともと浮気するつもりは無くても、「メールやチャットのナイショ度が高い」って事が裏目に出て、ついつい二股、三股がけになっちゃったりするのもネット恋愛の怖いところ。また「ナイショ度が高い」というのも幻想で、ヤバイ事に限ってよくバレるんだ、コレが。バレる原因は、同性のネット友達のチクリとか無責任な噂とかだったりするけど、中にはメールの単純な宛先間違いとか、間抜けな理由で露呈する事もあるぞ。
 てなわけで浮気が発覚すると、チャットルームとかで修羅場状態が発生しますが、この時も文字コミュニケーション特有の「精神直撃力」が悪い方向に作用するので、なかなかキツイ体験になりますよ〜。心当たりのある人は覚悟するようにね。

 で、この「出逢い→熱愛→破局」のプロセスが、ネット恋愛だとわずか2週間くらいの出来事だったりするのだなぁ。当事者に横から話聞いてると、展開があまりにめまぐるしくて、ついていけなかったりします。

 さて、このようなドタバタ劇が起きると「それは恋愛に免疫の無いモテナイ君だったからじゃないの?」みたいな意見がよく出てきますな。確かに恋愛経験の少ない人ほどネット恋愛に翻弄されやすい、という一面はあるみたいだね。相手に入れ込んだあげく、妻子を捨てて新しい恋人の元に走った、とかいう極端な行動に出る人もいるしぃ。
 ただ、恋愛経験豊富だからといって、ネット恋愛の罠にはまらないかというとそーでもなくて、恋愛の達人でも、普通なら引っかからないようなツマラナイ男(女)に熱を上げちゃったりする事も多いのだ。どうも原因は、本来その相手の持っている人間的魅力に、「純度の高さ」や「本音のつきあい」といった「ネットの魔力」が加算されてるせいみたいだぞ。戦略シミュレーションでいう「地形効果」ってやつ(笑)。

 あ、「地形効果」で気付いたんだけど、ネット恋愛って「自分がキーボードに対して入力したこと」に対する結果が、チャットの場合は数秒後、メールの場合は数分後に反応が帰ってきて、その反応を見て、また何かを入力する、という行為の繰り返しなんだよね。これってコンピューターゲームをやってる時の行動にすごく似てるし(しかも対戦型だ!)、ネット恋愛にハマってる時の脳内麻薬の出方って、実際の「恋愛」より、ゲームに没入している時に近いような気がするぞぉ。

 これは本当に恋なのだろうか? それとも「ネットを使った出逢い」という新しいパターンから来る刺激に、脳が反応してるだけなのだろうか? という疑問は、常に頭の片隅に置いておいた方がいいかもしれませんな。

 まぁ、いろいろマイナス面も書きましたけど、私はけっしてネットでの出逢いというものを否定する気は無いです。と、いうより「ネットワークにおける人間関係」なんてのは、まだ全人類挙げての壮大な実験を始めたばかりだし、当分はドタバタといろんな事が起こって楽しそうだね〜。
 多少、痛い目に合うかもしれないけど、今から参加しておいた方がイイと思うぞ。

 みなさんもネットでいい出逢い、ありましたか?


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