○宇宙・オルドビス軍団基地
ばーーーん!
−−−そびえ立つカニ型の巨大メカ。
下にテロップ [メガモンス・ダブルクラバー]
○同
シルル「おーーっほっほっほっほっほっ」
響きわたるシルルの笑い声。
シルル「勝てる! このダブルクラバーさえあれば、今度こそスターピンキーQに勝てるわっ!」
デボン「どーしたんスかコレ? ……金も無いのに」
シルル「心配無いわよデボン参謀。ローンよローン!」
シルル「(ヒソヒソ声で)25年ローンを組んだから、1回の支払いは千ボルで済むわ」
シルル「それに五年以内には全銀河を制圧する予定だし、そーすりゃ残り二十年分は自動的にチャラ。どう? 完璧な計画でしょ」
デボン「(呆れて)…………………………」
○地球・はるかの家(朝)
シューーーーーーッ!
はるかの家の屋根に着陸するスターブリーム号。
ハッチを開け、外に出たはるか、屋根を見上げる。
家の上に巨大な魚が乗ってるみたいで、とても変。
はるか「(ガクッときて)あああああああああ……」
マリオン「家の屋根は強化しておきましたから大丈夫です」
はるか「いや、そーゆー事を言いたいんじゃなくてぇ…」
マリオン「それにこうしておけば単なるオブジェにしか見えません」
はるか「…そ、そんなんでみんな納得するかしら?」
マリオン「心配ありません。ほら、名古屋城の上にも金の鯱鉾が乗ってるじゃありませんか。同じ事です」
はるか「(困惑して)うーーーーーーーん」
タルト、はるかの手を引っ張って、
タルト「おねーさまおねーさま、中もちゃんと直したんですよ。見て下さーい」
はるか「え、あ、はいはい」
タルトに連れられ、家の中に入るはるか。
○家の中
ばーん!(部屋1)
ばーん!(部屋2)
ばーん!(部屋3)
どの部屋も派手で悪趣味な装飾。(部屋のディティルはお任せします。)
はるか「(呆然として笑うしかない状態)…あは、…あは、……あはははは」
タルト「喜んでいただけましたぁ? ちゃんとおねーさまの趣味に合わせたんですよぉ。いやー、これだけ揃えるのに苦労しちゃったぁ」
はるか「あたしの趣味ぃ? これがぁ!?」
マリオン「キャプテン、強化服のメンテナンスも終わりました。いつでも装着可能です」
はるか「えっ、強化服?」
マリオン「D−335型改・特注バージョン。通称『ピンキースーツ』」
マリオン「あらゆるショックを吸収し、その上耐熱耐寒耐真空、まさに宇宙科学の結晶とも言える強化服です」
はるか「…と言うと、えすえふアニメに出てくるみたいなのかしら?」
パワードスーツみたいなのを想像しているはるか。
はるか「なんかスゴそう。とりあえず着てみちゃおかな」
○そして…
はるか「これが、……そうなの?」
ピンキースーツに着替えたはるか。
露出度の高い、ほとんど水着みたいな服である。
マリオン「はい、高度な防御能力を備え、なおかつ極めて軽量なのがこのピンキースーツの素晴らしいところです」
はるか「……………………」
無言で元の服に着替えるはるか。
マリオン「どうしました? キャプテン」
はるか「こんな恥ずかしい服、着てられないわよっ!!」
タルト「あれぇ? 昔は喜んで着てたのにねぇ。」
タルト「あたしのだいなまいつ・ぼでーのミリョクを一番引き出すのはこの服よぉおお、とか言ってたクセにぃぃ」
はるか「(考え込む)……む、昔のあたしって、いったいどういう性格してたのかしら?」
タルト「そりゃーーーーーーーもう」
マリオン「(口ごもりつつ)ま、何と言いますか、その……」
タルト「(マリオンに同意を求める様に)ねっ!」
はるか「……………………………」
マリオン、その場の雰囲気を取り繕う様に、急に話題を変える。
マリオン「あ、そうそう。ついでにピンキーボードも整備しておきました。」
はるか「え、なにそれ?」
○外
はるか、ピンキーボードに乗って、地上50センチくらいのところをフワフワ浮いている。
はるか「(バランス取りながら)……っとっとっと」
マリオン「反重力装置で空中を自在に飛行できるボードです」
はるか「ほっ、ほっ、んーなるほどぉ」
マリオン「バランスにクセがあるので、乗りこなすのは難しいのですが…」
はるか「それっ!」
はるか、すぐ乗り方を思い出し、(体が覚えている)スイスイと家のまわりを飛び回る。
マリオン「……さすがですね」
はるか「あはっ、いい。コレ最高!!」
はるか「(下のマリオンに)少し遊ばせてねー!」
マリオン「あ、キャプテ……」
はるか、ボードに乗ってビューーーンと飛んでいってしまう。
○空
はるか「んーーんんん。気持ちイイ」
空を飛ぶ爽快感に酔っているはるか。
はるか「ん?」
ふと下を見る。
公園のブランコに深刻そうな顔をした琴菜が座っている。
はるか「あ…………」
琴菜に気付かれない様、静かに降りるはるか。
○公園
はるか「……琴菜」
琴菜「(驚いて)はるかちゃん!!」
琴菜、はるかに抱きつく。
琴菜「(泣きながら)…よ、よかった。私、心配で心配でもう……。ああああーーーーーーん」
はるか「こんな朝早くから、あたしを探しに?」
琴菜「……だって、だって」
はるか「ごめんね、琴菜」
○航空自衛隊基地
飛行場に警報が響きわたる。
声1「関東上空に未確認飛行物体!」
声2「緊急発進(スクランブル)!!」
次々と飛び立っていくジェット戦闘機。
○空
戦闘機1「国籍不明機に警告。貴機は現在、日本領空を侵犯しており…。うっ!」
どじゃーーーーーーん!!
輸送用円盤からビームシールドで釣り下げられて飛んでいるダブルクラバー。
戦闘機1「……な、なんだあれは!?」
戦闘機2「かまわん、撃てっ!」
ダブルクラバーに攻撃をかける戦闘機隊。
○ダブルクラバー・操縦席
シルル「なんで地球人の原始的なレーダーに引っかかるのよっ!」
デボン「(コクピットを調べながら)だってほら、増設スロットにステルスユニットが入って無いスよ」
シルル「え?」
デボン「細かいトコをケチるからです」
シルル「……うう」
○学校・高等部の校舎
はるか「いや、そのぅ、今朝目覚めたらベッドの上で、何があったのかまるで覚えてなくてぇ、……それで」
織田先輩や超研部員たちを前に言い訳するはるか。(琴菜も付き添っている)
織田「ふう〜む、なるほどなるほど。いや、UFO事件ではよくあるケースなんだよ」
琴菜「どういう事ですか?」
織田「UFOの中に連れ込まれた人が、その事をすっかり忘れてしまうっていう話。おそらく宇宙人によって記憶を消されてしまうんだろうね」
琴菜「記憶を消す? そんな事が可能なんですか?」
織田「高度な科学技術を持った宇宙人なら、そのくらい簡単に…」
他の部員たちも「これはスゴイ事件だ!」「やはり報告した方が…」とかいろいろ議論している。
はるか、そんな会話をボーッと聞きながら、
はるか「(心の声)……この私が実はその宇宙人だなんて言ったら、驚くだろうなぁ」
はるか「(心の声)我こそは宇宙の勇者、スターピンキーQ!!」
あの恥ずかしいピンキースーツ姿が脳裏に浮かぶ。
はるか「(赤面して)……あ」
はるか「(心の声)なーんて、言えるわけないな。やっぱし…」
○空
戦闘機隊の攻撃を受けているダブルクラバー。
○ダブルクラバー・操縦席
シルル「ええーい、うっとおしいわねぇ」
輸送用円盤に通信で指令するシルル。
シルル「いいわ、ここで降ろして」
輸送機「(声のみ)はっ!」
○空
輸送用円盤、シールドビームを切る。
そのまま落下していくダブルクラバー。
○市街地
ごごーーーん!!
地響きを立て、ビルの谷間に着地するダブルクラバー。
群衆1「ああっ! あれはなんだ!?」
群衆2「きゃああああ、ロボット怪獣だわ!!」
群衆3「うわぁ、大変だあっ!!」
キシャーーーッ!! とおたけびをあげるダブルクラバー。
攻撃を続行する戦闘機隊。
増援にヘリ部隊や戦車隊も到着し、市街戦となる。
○ダブルクラバー・操縦席
シルル「ううう、メンドーな事になってしまった」
デボン「あ、ほいほいほいっと」
楽しそうにビーム砲の発射スイッチを押し、戦闘機を撃ち落とすデボン参謀。
シルル「こんな事しにきたんじゃないのにー!!」
デボン「ま、焦ってもしょーがないッスよ」
○学校
自分のクラスに戻ってきたはるかと琴菜。
クラスメイトたち、窓にへばりついて、ビル街の方の騒ぎ(黒煙が上がっている)を眺めている。
はるか「ねぇねぇ、何かあったの?」
女生徒「なんでも街にロボット怪獣が出たんだってさー」
琴菜「ロボット怪獣!?」
ピピピピピピピピピピピピ。
−−−その時、はるかの胸のポケベルが鳴る。
はるか「はっ!」
ポケベルの表示窓には「QQQQQQQQ」の文字が浮かび上がっている。
○屋上
はるか、あわてて屋上に出る。
ポケベル、光と共にピンキーアイに変形、はるかの顔面に自動装着される。
マリオンRからの通信が入る。
はるか「どうしたの?」
マリオン「キャプテン、オルドビス軍のメガモンスが出現しました」
はるか「メガモンス?」
マリオン「戦闘用の有人ロボット兵器です。機種はタイプ52・ダブルクラバー。現在、地球の軍隊と交戦中です」
はるか「場所は?」
マリオン「ここです」
ピンキーアイ内部に情報が表示される。
はるか「よーし! 行ってみる!!」
ピンキーボードに乗って、軽やかに飛び立つはるか。
マリオン「あ、キャプテン! メガモンス相手に、強化服無しでは危険です」
はるか「あんなの着れないわよ!」
○空
しだいに昔の感触を取り戻していくはるか。
はるか「(心の声)なにかしら? …この高揚感。どんどん勇気がわいてくる!」
○市街地
シルル「あーーもう! うざったいわね!!」
暴れ回るダブルクラバー。逃げまどう人々。
あっけなく破壊される戦車。
群衆4「ダメだ! 戦車やジェット機じゃあのロボット怪獣に歯が立たない」
群衆5「日本はもうおしまいだぁ!!」
群衆6「(空を見上げて)いや待て! あれを見ろ!!」
○空
はるか「行っけーーーっ!!」
ピンキーボードに乗って飛来したはるか。巨大なダブルクラバーに戦いを挑む。
○ダブルクラバー・操縦席
デボン「出た! スターピンキーQッスよ!!」
シルル「なにっ!?」
○市街地
ぐいーーーーん!!
ダブルクラバー、はるかに向かって巨大なハサミを振りおろす。
はるか、サッとかわす。
はるか「遅い!」
はるか、ピンキーバトンを延ばし、ダブルクラバーのハサミ腕をぶった切る。
どどーーん!
道路に落下するハサミ腕。
群衆7「すごい! あの女の子、一人で怪獣と戦ってるぞ」
群衆8「きゃー、かっこいいー!!」
群衆9「いったい何者なんだ!?」
タルト「(声のみ)みっなさーーん! あれこそは宇宙の勇者・スターピンキーQなのでーす!」
群衆、振り向く。
タルトPとマリオンR、街宣車(選挙みたいにでっかく「スターピンキーQ」と書いてある)の上に乗って、拡声器でアジっている。
群衆10「スターピンキーQ!?」
タルト「そうでーす! 宇宙の平和を守る自由の戦士、正義の味方、そして魅惑のアイドルなのでーす!」
群衆11「おおっ、なんか知らんがすごそうだ!」
タルト「さぁみんなでスターピンキーQを応援しよー!!」
群衆「おおおおーーーーっ!」
ノリ始める群衆。
タルト「(マリオンRの方を向き)おねえさまは派手好きだから、きっと喜んでくれるわ」
マリオン「(微笑んで)この星でもスターになれるといいですね」
○空
はるか、下からの声援に気付く。
はるか「えっ!?」
「いいぞー!」とか「がんばれー!」とかの声が響く。
はるか「あはっ! 悪い気分じゃ無いわね。そーれ、もう一丁!」
はるか、ダブルクラバーのもう片方のハサミ腕も切り落とす。
はるか「へへっ、もんだどんだいっ!」
はるか、群衆の声援に応えて、ジェット雲で空に大きくQの字を描く。
群衆、更に熱狂して声援を送る。
○ダブルクラバー・操縦席
シルル「ふ、ふざけやがってぇーーー!! 強化バブル液発射ーーっ!!」
○市街地
二つの首からカニの泡状の武器を発射するダブルクラバー。
はるか「きゃっ!」
油断していたはるかに命中!
○ダブルクラバー・操縦席
シルル「骨まで溶かすスーパー溶解液よ! 思いしったか!!」
○市街地
群衆12「ああっ!!」
タルト「大丈夫! 無敵のピンキー星人があれくらいでやられたりしないわ」
………泡、消える。無傷なはるかの姿が現れる。
ただし、着ていた服はボロボロで、とても恥ずかしい格好になっている。
群衆「おおーーーっ!」
はるか「(赤面して)………………………」
マリオン「(上を見上げて)だから強化服を着た方がいいって言ったのに…」
はるか、恥ずかしい目にあい、フツフツと怒りがこみ上げてくる。
はるか「くうううううううっ…」
はるかの体、徐々に光を放ち始める。
はるか「……許さんっ!」
タルト「(喜んで)きゃあ、見て見て! あの目は昔のおねえさまよぉ!!」
はるか「Qフラッシャー!!」
はるかの体から放射された光の束が、ダブルクラバーを直撃!!
一撃で消し飛ぶダブルクラバー。
ぴゅーーーん!
大爆発の中からシルルの乗った脱出艇が飛び立っていく。
○脱出艇内部
はるかのパワーのすさまじさにおびえているシルル。
シルル「…あ、あれがQフラッシャーか。なんて威力なの…」
デボン「(冷たい目で)スターピンキーQを甘く見すぎましたねー」
シルル「ううっ、く、くやしいーーーっ!!」
大気圏外へと上昇していく脱出艇。
○市街地
スターピンキーQの勝利に、大歓声を上げる群衆。
○無責任なナレーション
N「やったぞ星野はるか! すごいぞスターピンキーQ!! 必殺Qフラッシャーで、これからもオルドビス軍団のメガモンスから僕らの地球を守ってくれ!!」
はるか「イヤよもう、こんなの!」