#6「もう一人のスターピンキー その名はZ」(94/12/19)


○地球・はるかの家。
   冬の夜空を見上げているはるか、マリオン、タルトの三人。
   市街地には珍しく、星が綺麗に見えている。
はるか「ねぇ、マリオンR。ピンキー星ってどの辺にあるのかなぁ?」
マリオン「……いえ、残念ながらピンキー星はどこにもありません」
はるか「え?」
マリオン「ピンキー星は、今から二万年前にブラックホールに飲み込まれ、消滅してしまったそうです」
マリオン「生き残ったピンキー星人はごくわずか…。私もキャプテン以外のピンキー星人を見た事はありません」
マリオン「もしかすると、キャプテンがピンキー星人最後の一人かも…」
はるか「ふーーん、あたしって宇宙的スケールで天涯孤独なワケね」
タルト「孤独ぅ? おねーさまにはあたし達がいるじゃないですかぁ」
はるか「……いや、でもねぇ」
タルト「なんだか寂しそうですね、おねーさま?」
   タルトPの腕、スライム化してはるかの腕に巻き付く。
タルト「おねーさまとだったらこのまま細胞融合しちゃってもいいですぅ」
タルト「そうすれば、常に一心同体。もう寂しくないでしょ?」
はるか「や、やめんか〜〜!!」

○タイトル

○月面・オルドビス軍基地
シルル「ネオUPBぃ??」
   作戦会議を開いているシルル、デボンたちオルドビス軍と遊星大使。
遊星大使「そうです。このネオUPBは改良を重ね、威力も倍増しています」
遊星大使「もう『必ず直腸から』なんてまだるっこしい事は言いません」
遊星大使「このネオUPBが一滴でも体内に入れば、スターピンキーQもそれでおしまいです」
シルル「おおおおおーーーっ!! スゴイじゃない!!」
遊星大使「しかも1カプセル、たったの二万ボルです」
シルル「え??」

○別枠コーナー「デボン参謀メモ」
図=500ボル札・100ボル札・10ボルコイン・1ボルコインの絵(デザインお任せします)

デボン「ボルというのは銀河系で主に用いられているお金。1ボルが日本のお金で二百五十円くらい。だから二万ボルといえば五百万円!!」

遊星大使「なにぶん、研究費がかかっておりますのでね。たった一万ボルでスターピンキーQが倒せるなら安いものでしょう?」
シルル「(迷っている)ううう…」
遊星大使「それに今ならこの専用狙撃銃と、この季節にはかかせない6号土鍋セットがもれなく付いてきます!」
シルル「よし、買ったぁ!!!!!」
デボン「へ、陛下…」

○地球・はるかの住む街
   マンションの屋上に、小型円盤が着陸している。
   密かに地球に潜入したシルル一味である。
デボン「我がオルドビス軍団一の狙撃の名手、G−13号です」
シルル「(目がマジ)いい、一発で命中させるのよ。高いんだからね」
G−13号「(余裕の笑みを浮かべ)フフフ、おまかせ下さい」

○狙撃銃のスコープの中の映像
   書店から出てきたはるか。琴菜もいっしょ。
G−13号「あれだな、よし!」

○マンション屋上
   G−13号、ネオUPBカプセルを発射!
   パシッ! 見事にハズレる。
シルル「う゛……」
G−13号「申し訳ありません、陛下」
シルル「…い、いいわ。誰にでも失敗はあるもんね」
   シルル、ピッと札束を切り、
シルル「遊星大使さん、もう一発頂戴!!」

○路上
   話ながら歩いているはるかと琴菜。はるか、今買ったばかりの本を取り出し、
はるか「超研部員としては、これくらい読んでおかなくちゃねー」
   (本のタイトル「世界の謎と不思議大事典」)
   パシッ! はるかの足元でカプセルはじける。2発目もハズレ。
はるか「しかしこの本、二千五百円もするとは…。ちょっと痛かったなー」
   パシッ! 3発目もハズレ。
   パシッ! 4発目もハズレ。
琴菜「そう?」
   パシッ! パシッ! 5、6発目もハズレ。
琴菜「私なんて一回神保町へ行くと、三万円は使っちゃうけど」
   パシッ! パシッ! パシッ! 7〜9発目もハズレ。
はるか「(呆れて)……琴菜は特別よぉ」

○マンション屋上
   G−13号の射撃のあまりのヘタさに、ついにキレるシルル女王。
シルル「ぐあああああああっ、このどヘタクソぉっ!! 二十万ボルもムダ遣いしやがってーーーーーっ!!!!!!」
G−13号「うーーーん、どうやらコリオリの力が影響してるみたいですね」
シルル「んな事をどうこう言える腕かあぁぁぁ!!!」
遊星大使「最初から10発セットでまとめて買っていただければ、3割引きにしましたのに…」
   それを聞いて、更にキレるシルル。
シルル「くううううううううううううっ!」
   このままではラチが開かないと見た遊星大使、自ら狙撃銃を取り、
遊星大使「仕方ありませんな。大サービスですよ」
   パシッ! 見事一発で命中させる。
シルル・デボン・G−13号「おお!!」

○路上
琴菜「?? どうしたの、はるかちゃん?」
はるか「今なんか首の後ろがチクッとした様な…」
はるか「…気のせいかしら」

○月面・オルドビス軍基地
   テロップ「−−−三日後」
   地球から送られて来ている偵察映像を見ているシルル女王。
   モニターにはいつもとかわりなく、元気に楽しい学園生活を送っているはるかの姿が映っている。
デボン「全然変化が見られませんねー」
   遊星大使に詰めよるシルル。
シルル「どおいうこっちゃあああ!!」
シルル「てめー、にじゅうまんもボッといて、ガセだったらタダじゃすまんぞおおお」
遊星大使「……金が絡むと、途端にガラが悪くなりますな。女王陛下は」
シルル「(目が座っている)うるへーー」
遊星大使「しかし、おかしいですねぇ。こんなハズでは…」
   遊星大使、ポンと手を叩き、
遊星大使「そうか、わかったぞ。温度が原因だ!」
シルル「へ?」
遊星大使「UPBは気温が25度以下の場合、効果が半減します」
遊星大使「そして残念ながら、あの星でスターピンキーQが住んでいる地域は今、冬」
遊星大使「まぁ、あと半年待てば夏になります。そうすれば皮膚に付着したUPBが活動を開始し…」
シルル「半年ぃ!? そんなに待つのぉ」
遊星大使「お急ぎならば、これはいかがです?」
   遊星大使、持っていたコントローラーを操作する。

○月面・基地の外
   上空に飛来した小型の人工太陽。
遊星大使「小型ですが強力な人工太陽球です。お値段はたったの40万ボル」
シルル「うっ…」
デボン「(心の声)いいようにカモられてるなぁ…」

○パッと画面変わって

○空
   空に浮かぶ二つの太陽。
   冬なのに明るい日差し。晴れ渡った空。

○海水浴場
はるか「きゃっほーーっ!!」
   はしゃぐ水着姿のはるか。琴菜とタルトも一緒。
はるか「うーーん、まさか3月号で水着になれるとは思わなかったわ」
タルト「さすがにガラ空きですねー」
琴菜「ねぇ、はるかちゃん。その子は?」
はるか「ああ、この子はタルトP。ま、私の妹分ってトコね」
タルト「よろしくぅ」
   タルト、握手しようと手を差し出す。
琴菜「よろしくね、タルトちゃん。私は仲琴菜…」
   琴菜、握手しているタルトの手が妙に伸びている事に気付く。
   はるか、パシッとサンダルでタルトの頭をはたく。
はるか「(小声で)そーゆー事をしないって言う約束で連れて来たんだからねっ!」
タルト「ふえええん、ゴメンなさいおねーさまぁ」

○はるかの家
   一人残ってTVのニュースを観ているマリオンR。

キャスター「突然の異常気象に気温は30度を越え、気象台観測史上始まって以来の記録となり、農作物への影響が懸念されています」
キャスター「この季節はずれの暑さの原因は、昨日出現した、二つ目の太陽の影響によるもの思われ…」

マリオン「やはりオルドビス軍団のしわざとしか思えないわ…。でも、何の目的でこんな事を?」

キャスター「大槻教授、第二の太陽の正体はいったい何なのでしょう?」
大槻教授「(きっぱりと)プラズマです」
キャスター「…………………………」

マリオン「調査する必要がありそうね」

○同・屋根の上
   調査の為、背中にロケットパックを背負い、飛び立つマリオンR。

○海水浴場
はるか「そ−れぇ!」
   ビ−チボールで遊んでいる三人。その時!
   ゴゴゴゴゴゴゴゴ…。
タルト「はっ!」
   空に降下してくるメガモンスのシルエットが!!
はるか「メガモンス!!」
   ずーーーーん! 砂浜に着陸したメガモンス!
   テロップ「廉価版メガモンス・ジオマネキン」
   今回のメガモンスはとても小型。シルルとデボン、狭いコクピットで窮屈そう。
タルト「小さぁ〜〜い」
シルル「うるさいわね!! 今回は予算の都合とかいろいろあるのよ」
シルル「それに、今のあんたならコレで充分。行くわよ! スターピンキーQ!!」
   攻撃をかけようとするジオマネキンの前に、立ちはだかる琴菜。
琴菜「待って宇宙人さん、人違いよ!!」
琴菜「はるかちゃんは確かにスターピンキーQに似てるけど、別人なのよ」
シルル「ええい、やかましいっ!! どけぇ!!」
   シルル、ジオマネキンのアームで琴菜をはねとばす。
琴菜「きゃああっ!」
はるか「琴菜!!」
   タルト、素早く体をマット状に変形させ、琴菜を受けとめる。
   琴菜、気を失っている。
はるか「許せない!」
   はるか、パッとピンキーバトンを取り出し、戦闘態勢に入ろうとするが…。
   ガクッ! 突然力が抜け、膝をつく。
はるか「どうしたのかしら、いつもみたいに力がわいてこない…」

○空
マリオン「あれね!」
   燃え盛る人工太陽球。
マリオン「やはり人工太陽か…」
   マリオン、肩からアンテナを伸ばす。
マリオン「ジャミングシステム・オン! コントロール電波を遮断!」
マリオン「続いて人工太陽球の制御コードをサーチ!」
   その時、一条のビームがマリオンのアンテナを吹き飛ばす。
マリオン「はっ!」
   あわてて振り返るマリオンR。
   マントをたなびかせ、空に浮かんでいる遊星大使。
遊星大使「おっとそこまでだ。今、下じゃいいところなんでねぇ」

○海岸
   無力なはるか。ジオマネキンのハサミにジャキジャキと水着を切られる。
はるか「きゃあああああ!!」
タルト「ああっ、おねぁさまああ!!」
   タルト、失神した琴菜を抱き抱えているので動きが取れない。
シルル「ほれほれぇ! たっぷりといたぶってやるぅ!」
デボン「陛下ぁ。それじゃなんだかスケベな中年オヤジみたいですよ」
シルル「わかってるわ。だがしかし!!」
   シルル、ピッと紙面の外を指さし、
シルル「読者の声援は今こっちに来てるわ!!」
デボン「おお、ならば怖い物無しですな」
   更にジャキジャキとはるかの水着を切りまくるジオマネキン。
シルル「(ギャグっぽく)ほーほほほほ、天の声よ天の声なのよ」
はるか「ウ、ウソつけ〜〜っ!」

○空
   −−−うって変わって上空では、遊星大使VSマリオンRのハードな闘いが展開している。
   遊星大使、マリオンのフィンガーミサイル攻撃を避け、指先から素早くビームを発射。
   ビシッ!! ビーム、マリオンの腹部に命中。
マリオン「しまった!!」
   カパッとカバーが開いて、中のメカがむき出しになる。(鉄腕アトムみたいに)
遊星大使「…フフ、アンドロイドの弱点ぐらい承知しているさ」
   遊星大使、マリオンの腹部にビームの集中攻撃。
マリオン「きゃああああああああ!!」
   炎上しながら落下していくマリオンR。
遊星大使「フッフッフッ…」
   ズバアアアアアン!!
   突如、大爆発を起こす人工太陽球
遊星大使「なんだ!?」
   爆発の煙の中からパッと飛び出して来た小型宇宙艇。
   (全体に縞模様の塗装が施されている。)
遊星大使「あれは!?」
   小型宇宙艇、遊星大使の円盤めがけて激しくミサイル攻撃。
遊星大使「くっ、とんだ邪魔が入ったな」
遊星大使「今回はここまでか…」
   あわてて逃げ去る遊星大使。

○海岸
   ドサッ!! ちょうど下の砂浜に落下するマリオンR。
タルト「マリオンR!!」
マリオン「出力ダウン。機能レベル2に低下。自動修復装置作動…。
マリオン「安全の為、メイン回路オフにしま…」
   シューーーン! マリオンR、電源が切れる。(気を失う)
   オロオロするタルトP
タルト「そ、そんなぁ。マリオンRまでやられちゃっただなんて!! どうすればいいのよぉ」
   水着ズタズタ状態のはるか、巨大なハサミに首を挟まれ、釣り上げられている。
はるか「…マ、マリオンRぅ」
シルル「他人の事より自分の心配したらぁ? このハサミをチョキンとやれば、それであんたはジ・エンドよん」
   勝ち誇るシルル女王。はるか、絶体絶命のピンチ!!
声「ゼットエンド・ビーーーム!!」
   空から降り注ぐ一条のビームがジオマネキンのハサミ腕を叩っ斬る。
シルル「わわっ!」
   ズデーーーン!! バランスを失いひっくりかえるジオマネキン。
   上空を見上げるはるか。
はるか「誰!?」
   降下してくる小型宇宙艇。
   その上にすっくと立つ、縞模様のスーツの女戦士。
女戦士「……私の名は、ピンキーゼブラ」
はるか「ピンキー、……ゼブラ??」
ゼブラ「そう、君と同じスターピンキー」
ゼブラ「“Z”だ!!」
ゼブラ「ゼブラ・メディカル・フラッシュ!!」
   はるかに向けてリング状の光線を発射するピンキーゼブラ。
はるか「きゃっ!! 何を…」
ゼブラ「これでUPBの効果は消える」
はるか「!! 力が…、力がわいてくる」
   ムックリと身を起こすジオマネキン。
シルル「ちょっとぉ、そんなのありぃ? そこまでするのに、人がどれだけ苦労したと…」
デボン「てな事言ってる場合じゃないッスよ〜〜!!」
   復活したはるか、怒りの形相でピンキーバトンを振りかざす。
はるか「よくもよくもよくもよくもやってくれたわねーーーっ!!」
はるか「ピンキークラッシュッ!!!」
   ちゅどーーーーん!!
   毎度のパターンで大爆発のメガモンス。
シルル「なんでこうなるのーーっ!」

○同
   その光景を見守っていたゼブラ、
ゼブラ「見事だ、スターピンキーQ」
ゼブラ「もう心配無いようだな。では、私はこれで…」
はるか「あ、待ってピンキーゼブラ! あなたに聞きたい事が…」
ゼブラ「すまないが時間が無い。遊星大使を追わなくてはならないのだ」
   上昇していくゼブラの宇宙艇。
ゼブラ「いずれ、また逢う時もある。さらばだ」
   見送るはるか。
はるか「ピンキーゼブラ…。私と同じ…、ピンキー星人」
はるか「……一人じゃ、一人じゃなかったんだ」

N「こうして危機は去った…。だが、謎の遊星大使の正体は? そしてピンキー星人の滅亡に隠された秘密とは? 今、宇宙にかつてない危機が迫ろうとしていた!!」

○ラストのコマ(オチ)
N「ついでだが、あんなに浪費してオルドビス軍団の財政状態は大丈夫なのか!?」
シルル「ほっといてちょーだい!」


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