#10「宇宙からの侵略生物」(95/06/06)


○オルドビス軍月面基地
   降下していくシルル機。その内部の会話。
シルル「はあ〜ぁ」
デボン「陛下、元気無いッスねぇ。Qに負けちゃったのはいつもの事でショ」
シルル「今回のはさすがに堪えたわよ」

○同・内部
   廊下を歩いていくシルルとデボン。
シルル「もう一度、一からやり直しね。…うっ!?」
   ガシャッ!
   女王の間に入った二人に銃を向けて構えるオルドビス兵たち。
シルル「お前たち、何を…。女王に刃向かうとは何事か!」
遊星大使「もうあなたはオルドビス軍団のリーダーじゃ無くなったんですよ、シルルさん」
シルル「なんですって!」
   遊星大使が女王の玉座に腰掛けている。
遊星大使「あなたのやり方じゃQに負けてばかりだし、銀河系征服も一向に進まない。兵にも愛想をつかされたってわけですよ」
遊星大使「そこで、不肖この私が、新しく帝国の指導者に就任した、というわけです」
シルル「そんなバカな事が…。はっ!」
   シルル、兵士たちの雰囲気がおかしいのに気付く。
シルル「(心の声)しまった! マインドコントロールされたか。ちっ、もともとクローン兵は命令に服従させる為に、思考力を弱めてあったからなぁ…」
   玉座の後ろからカンブリア星人が姿を現す。
カンブリア星人A「では、君にはここらでこのお話から退場してもらおうか…」
カンブリア星人B「この後の主役は我々だからね」
シルル「…カ、カンブリア星人!? くそ、黒幕はお前らだったのか」
遊星大使「さぁ殺るのだ、兵士諸君!」
   兵士たちに号令をかける遊星大使。
デボン「そうは行かないッス!」
   バン! 発光弾を投げるデボン参謀。
   目がくらむオルドビス兵たち。
遊星大使「しまった!」

○月の上空
   急上昇していくシルル機。
シルル「助かったわ、デボン参謀」
デボン「陛下とつきあってきたおかげで、逃げ方だけは鍛えられましたからねー」
シルル「皮肉はやめてよ」

○月面基地
   不気味に浮遊するカンブリア星人たち。
遊星大使「申し訳ありません。シルル女王に逃げられてしまいました」
カンブリア星人A「なぁに、かまわん。軍団無しでは大した事はできんよ」
カンブリア星人B「それより、この月面基地を手に入れたのは大手柄だぞ、遊星大使」
カンブリア星人C「そう、この距離なら地球のどの地点にでもテレポートできる」
カンブリア星人D「これで地球人は食い放題というわけだ。クックックッ…」

○市街地
N「そして、地球では!」
はるか「…こ、これはいったい?」
   着陸したスターブリーム号から出て、あたりを見回すはるか、マリオン、タルト、ケインの四人。
   町の様子がおかしい。電車や車は止まり、商店のウインドウは割れたり、または固く閉ざされている。
はるか「いったい、何があったの?」
   道路にへたりこんでいる男に尋ねるはるか。
男「(顔を上げながら)…ひ、ひひひひひひひひ」
   明らかにマトモではない状態だ。
マリオン「髪の毛が真っ白になっています。おそらく、何か強い恐怖を受け、精神が崩壊してしまったと推測されます」
タルト「おねーさま、あれを!」
   タルト、ビルの壁面の大型モニターを指さす。

○モニター
アナウンサー「数日前から発生している突発性痴呆症は依然、猛威を奮い、本日、日本政府は非常事態宣言を発令いたしました」
   アナウンサーの後ろにカンブリア星人の写真が表示される。
アナウンサー「この流行性精神病の原因はまだつかめておりませんが、最近、この図の様な奇妙な生物の目撃が多数報告させられており、一部ではこの生物が…」

○市街地
ゼブラ「そうだ。カンブリア星人、奴らの仕業だ」
   はるか、振り向くとゼブラが自分の宇宙船から降りてやってくる。
はるか「説明してください、ピンキーゼブラ」
ゼブラ「うむ。奴らは、遠く暗黒星雲からやってきた、我々とはまったく異なる進化を遂げた生物だ」
ゼブラ「最大の特徴は、人間の精神エネルギーを食料とする事。つまり、心を食らうモンスター」
ゼブラ「(さっきの男を指さしながら)そして、カンブリア星人に心を食われた者はああなる」
はるか「なんですって?」
ゼブラ「我々人間型宇宙人(ヒューマノイド)は、奴らにとってエサにしかすぎんのだ。決して和解する事のできぬ究極の敵…」

○ゼブラの回想
ゼブラ「かつてカンブリア星人たちは、その食欲を満たすため、何度も銀河系に飛来した。そしていくつも惑星が奴らの犠牲となった」
ゼブラ「もちろん、我々スターピンキーは宇宙の平和を守るため、カンブリア星人と必死で戦った。奴らの巣を根こそぎ焼き払い、絶滅寸前にまで追いつめた」
ゼブラ「だがカンブリア星人の残党は、最後の逆襲をかけてきた。工作員を潜入させピンキータワーを破壊したのだ! そして、ピンキー星はブラックホールに飲み込まれ消滅した。今から二万年前の事だ」
ゼブラ「こうして、生き残りのピンキー星人は宇宙に散った。エルデ星を第二の故郷とした君のように…」
はるか「…そうだったの。そんな歴史があったなんて」

○市街地
ゼブラ「そして今、密かに数を増やしてきたカンブリア星人たちは、豊富な食料源であるこの地球に目を付けたのだ! 早急に手を打たないと全地球人の精神が食いつくされるぞ」
はるか「はっ! 琴菜は、織田先輩は? 学校のみんなは無事かしら?」
ゼブラ「友人の身を案じるなら、急いだ方がいい」
はるか「よし、行くわよ。みんな」
  駆け出すはるかたち。
はるか「(振り返りながら)あ、ケイン! あんたはココで私とゼブラの宇宙船の番をしてて! 連れてくとややこしそうだし」
ケイン「そ、そんなぁ。ミス・Q!」

○学園
   急ぎ駆けつけたはるか達が見たもの、それは…。
はるか「うっ!」
   校庭には、既に精神を食われ、アホアホ状態となった生徒たちが徘徊している。
   (深刻に描くとキツいので、なるべくコミカルめに描いて下さい)
生徒A「ぴろぴろ〜〜」
生徒B「へもへも〜」
タルト「あー、こりゃだみだ。みんなヤラレちゃってる」
はるか「先輩、琴菜、どこ?」

○校舎内・廊下
   どん! 誰かはるかにぶつかってくる。
はるか「(振り向いて)あっ?」
織田「やぁ、星野くん」
   一見、マトモそうな織田先輩にホッとするはるか。
はるか「良かった! 先輩は無事だったんで…」
織田「(唐突に奇声を発する)アカチバラチ〜〜!」
はるか「(怪訝そうに)アカチバラチ?」
   シャーーーッ! その場で小便を垂れ流す。
タルト「あーあーあーあーあ」
マリオン「まぁ大変」
   マリオン、さっと雑巾を出して床を拭く。
   はるかはあまりの事に硬直している。
はるか「(心の声)ひゃ、百年の恋も一気に冷める光景…」
   その時、女生徒の悲鳴が聞こえてくる。
声「きゃあああああああああああ!」
はるか「あの声は、琴菜!」

○琴菜の悪夢
   燃えさかる炎。焼け落ちて行く本棚。
琴菜「いやーーーっ、燃えるぅ! 私の本がぁぁぁ」
琴菜「海野十三の全集がぁぁ! 苦労して集めた『機械化』のバックナンバーがぁ!」

○教室
   幻覚を見てボーッとなっている琴菜の首筋に、カンブリア星人が触手を巻き付けている。
   そこへ飛び込んでくるはるか達。
はるか「琴菜!」
琴菜「(ブツブツとつぶやく)本が…、あたしの本が…」
マリオン「本? いったい何を?」
ゼブラ「幻覚を見せているのだ。奴らは『恐怖』の精神エネルギーをもっとも好む。おそらくあの少女がもっとも恐怖を抱くイメージを…」
はるか「許せない! ピンキー・クラッシュ!」
   はるか、バトン技で琴菜に巻き付いていたカンブリア星人をはじき飛ばす。
カンブリア星人E「グエッ!」
   床に叩きつけられ、もがくカンブリア星人。
はるか「くたばれ! Qサンダー!」
   怒りに燃えたはるかの手から発射されたイナズマ状の光線が、一瞬にしてカンブリア星人を焼き尽くす。
   (無意識の内に過去の必殺技を思い出して使っている)
カンブリア星人F「キーーーッ!」
   その途端、教室内に数体のカンブリア星人がテレポートしてくる。
   口から火球を吐き、はるかに襲いかかるカンブリア星人たち。
はるか「くだばれ、怪物ども!」
   バリバリバリ!
   はるか、Qサンダーであっという間に全部のカンブリア星人を倒す。
ゼブラ「早い…! さすがだな」

○同
はるか「琴菜! 琴菜!」
   琴菜を抱き起こすはるか。しかし、
琴菜「えへ、えへへへへへへへへ…」
はるか「うっ…」
マリオン「元に戻す方法は無いのですか? ピンキーゼブラ」
ゼブラ「うむ、奪われた精神エネルギーを補給してやれば、治療する事も可能だ」
ゼブラ「しかし、それには奴らの『巣』を見つける必要がある」
はるか「巣?」
ゼブラ「そうだ。それに、奴らはテレポート能力も持っている。一匹ずつ倒してもラチがあかぬ。巣を見つけて根こそぎ退治しなければ…」
はるか「でもどこにカンブリア星人の巣が…?」
   ズズーーン!
   町の方から爆発音が響く。
マリオン「まさか、スターブリーム号?」

○市街地
   燃え上がるスターブリーム号とゼブラカー。
   上空に逃げ去るカンブリア星人たち。
ゼブラ「しまった! やられたか」
マリオン「消火開始!」
   手から消火剤を噴出して火を消すマリオンR。
はるか「ケイン! この役立たず。あんた何やって…」
はるか「…あ」
ケイン「(消火剤をボーッと見つめながら)…きれい、きれいなあわあわ」
   既にアホアホ状態にされている。
はるか「…………………」
マリオン「キャプテン、スターブリーム号の修復にはかなりの時間がかかると思われます」
ゼブラ「宇宙船を狙った所を見ると、奴らの巣はこの地球上では無いな。おそらく…」
   その時、上空から声がする。
声「その通りよ!」
   一同、空を見上げる。降下してくるシルル機。
   コクピットの風防を開け、すっくと立つシルル女王。
はるか「シルル女王!」

○同
   シルルとデボンの話を聞くはるか達。
ゼブラ「なるほど。奴らの巣は月面基地か…」
はるか「あーーはははははは! あんたその遊星大使とかにまんまといっぱい食ったワケ?」
タルト「マヌケ〜っ!」
シルル「(ボロボロのスターブリーム号を指さして)きーーーーっ、あんたらだってこの有り様じゃない!」
はるか「…こ、これはケインの奴が悪いのよ」
シルル「あ、あんたケイン様のせいにするの?」
   シルル、アホアホ状態のケインの頭を撫でながら
シルル「かわいそうに。こんなになっちゃって…」
デボン「あー陛下。話をすすめないと」
シルル「そうだったわ。気がすすまないけど…」
シルル「コホン。銀河帝国皇帝、シルル・ド・オルドビスの名において、ピンキーチームに一時休戦を申し込むものである!」
はるか「休戦?」
デボン「つまりぃ、共通の敵カンブリア星人を倒す為、手を結ぼうって事ッス。月面基地を取り戻すのに、ワシらは戦力が足りない。おタク達は宇宙船が無い。悪くない取引だと思うッスよ」
はるか「えーーーーーっ、シルルとぉ?」
シルル「あ、あたしだって本当はスッゴクやなんだからねっ!」
はるか「……………………」
ゼブラ「ここは彼らの提案に乗ってみよう、スターピンキーQ」
はるか「ゼブラ!?」
ゼブラ「…君の友人たちを、地球人たちを助けたいのだろう?」
はるか「…わかったわ。よーしみんな、行くわよ!」
はるか「月へ!」

○宇宙
   月へ向かって飛ぶシルル機。
N「こうしてここに、長年の宿敵だったスターピンキーQとシルル女王の、奇妙なタッグが結成された! はたして二人はカンブリア星人の野望を打ち砕く事ができるのか?」

○最後のコマ
   狭いシルル機のコクピットの中で押しあいへしあいしている一同。
   (ギャグっぽく)
タルト「おねーさまぁ、苦しい!」(タルト、潰れている)
はるか「なんでこんなに狭いのよっ!」
シルル「しょーがないでしょ、本来二人乗りなんだからっ!」
デボン「(焦って)あー、そんなに押すと! 操縦がぁ…」
マリオン「気をつけてください! バランスが…」
ゼブラ「(心の声)…失敗だったかな?」


》》》次へ

》》》戻る