#12「蘇った記憶 そして新たなる力」(95/07/31)


○前回からの続き
   床に倒れふしているゼブラ。
特殊部隊兵「やったぞ! ついにピンキーゼブラを倒したぞ!」
   その光景を見て、怒りに燃えるはるか。
はるか「お前ら〜〜! よくもゼブラを!」
はるか「ピンキーストーム!」
   はるか、バトンを高速回転させる。巻きおこる大竜巻に、飲み込まれる特殊部隊兵たち。
特殊部隊兵たち「うわああっ!」

○同
   床にはピンキーストームによって倒された特殊部隊兵たちが散らばっている。
   倒れているゼブラに駆けよるはるか。
はるか「ピンキーゼブラ!」
ゼブラ「さすがだな、スターピンキーQ。…君は、誰よりも強い」
ゼブラ「…安心して、後を任せる事ができる。ぐふっ!」
   はるか、ゼブラが瀕死の状態である事に気付く。
はるか「ゼブラ、だめよ! 私を一人にしないで」
ゼブラ「無理を言うな…。20発ものUPB弾を食らったのだぞ。いかに不死身のピンキー星人といえど、死ぬ事はあるのだ」
ゼブラ「さらばだ、スターピンキーQ…。最後に君のような勇者に会えて良かった」
   ゼブラの体、光を放ちながら静かに消滅していく。
はるか「…ピンキーゼブラ」

○クローン工場内
   次々と増産されていく新クローン兵たち。
   (遊星大使側の兵士と見分ける為、少しデザイン変えて下さい)
シルル「おーっほっほっほっ! どう、これで数の上ではこっちが上になったわ」
   新クローン兵たちの出来映えを観察するマリオン。
   妙にチビなのや、背の高いのやら、デブなのやらいろいろいる。
マリオン「でも、なんだか兵士としては不揃いですね」
デボン「そりゃ、なんせ猛スピードで増産してるッスからねー。多少の不良品が出るのはしゃあないッスよ」
シルル「いいのいいの! この際“質より量”で行くわよっ!」

○基地・最上階
タルト「ふにゃああああああ」
   すっかり凍り付き、グロッキー状態の巨大アメーバ・タルト。
旧オルドビス兵「さて、どう始末してくれようか」
   その時、後ろの方からざわめきが…。
旧オルドビス兵「(振り向いて)むっ、なんだ!?」
   見ると、新オルドビス兵の部隊が襲いかかってくる。
   たちまち始まる大戦闘。新オルドビス兵側が優勢である。
シルル「(調子に乗って)おーほっほっほ! シルル様の大逆襲〜〜!!」
   凍り付いたタルトに駆けよるマリオン。
マリオン「タルト、今助けるわ!」
   マリオン、火炎放射して氷を溶かす。
   タルト、上半身のみ人間の姿に戻りながら、
タルト「あーー、ヒドイ目にあった。そうだ、おねーさまはどこ?」
マリオン「待って。今、探知するから…」

○基地・司令室
   スクリーンには基地の透視図が表示されている。
   戦況の変化に、あわてるカンブリア星人たち。
カンブリア星人A「なんという事だ!」
カンブリア星人B「き、君の作戦ミスだぞ、遊星大使! このままでは…」
遊星大使「…くっ」
   どばーん! 爆発音。
遊星大使「むっ!」
   振り返ると、そこには指令室の壁をぶち破り、すっくと立つ星野はるかの姿が。
はるか「そう、あんた達の負けよ、カンブリア星人!」
はるか「Qサンダー!」
遊星大使「はっ!」
   はるか、怒りのQサンダーを炸裂させる。
   遊星大使、あわてて耐電マントで身を覆うが、他のカンブリア星人たちは黒コゲになって全滅する。
はるか「ほう、面白い物を持ってるじゃない。そうか、あんたが遊星大使ね!」
はるか「ゼブラの仇、とらせてもらうわよ」
遊星大使「ふん、私はそう簡単にはやられんぞ!」
   グオオオオオッ! 追いつめられ、変身を始める遊星大使。
   その正体は、背中に鋭いトゲをはやした、巨大なハルシジニアであった。
はるか「やっぱり、あんたもカンブリア星人だったのね」
巨大ハルシジニア「隙あり!」
   ピシュン! ピシュン!
   ハルシジニア、背中のハリをはるかめがけて飛ばす。何本かが命中する。
はるか「ふん、この程度のダメージ。どうって事無いわよ」
巨大ハルシジニア「はたしてそうかな?」
はるか「うっ!」
   めまいがして、ふらつくはるか。
巨大ハルシジニア「くっくっく、そのハリには、強力な幻覚剤が塗ってあるのだよ」
はるか「くそ…」
巨大ハルシジニア「さあ、お前の精神エネルギーをいただくとするか。いくら肉体は不死身でも、精神パワーを奪ってしまえばおしまいさ!」
   はるかに迫る巨大ハルシジニア。

○はるかの幻覚
   巨大ハルシジニアの声が響く。
巨大ハルシジニア「さぁ心を開けスターピンキーQ! 超人パワーを持つ、お前にも“恐怖”の感情はあるはず」
巨大ハルシジニア「お前の一番恐れている物、それは何だ?」
はるか「(ぼうっとした表情で)…私が一番怖い事? それは…」

○幻覚1
   幻覚の中にエルデ星の光景が浮かび上がる。
はるか「…ここは? エルデ星!?」
   はるかに向かって微笑みかける、かつての恋人。(#9の肖像画の男)
はるか「…ああ、あなたはリジェ。わたしの愛しいリジェ…」
   と、はるかが手を伸ばした瞬間、若きリジェの姿は急速に老いさらばえ、やがてミイラ化していく。
はるか「きゃあああああああああああああああ!」
巨大ハルシジニア「わーっはっはっは。わかったぞ! お前の恐れるものが…」
   イメージ、リジェの墓標の前に立つ過去のQの姿。
巨大ハルシジニア「不死身の肉体を持つピンキー星人は歳をとらない。いつまでも若い姿のままだ。だが他の人間たちはそうは行かない」

○幻覚2
巨大ハルシジニア「そしてお前の仲間たちとて…」
   どこかの星の戦場。(はるかの回想)
   スターピンキーQと共に戦う旧型アンドロイド。(マリオンとは別)
   ビームが炸裂し、アンドロイドの腹部が大爆発を起こして吹っ飛ぶ。
Q「ラチェット!」
ラチェット「すみませんマスター、ここまでです。もうあなたと一緒に冒険する事もできません。さようなら…」
   機能停止する旧型アンドロイド・ラチェット。
Q「ラチェット〜〜っ!!」
巨大ハルシジニア「この時もそうだ。お前の恋人や仲間たちはみな、お前より先に死んでいく。それがお前の宿命だ」

○幻覚3
巨大ハルシジニア「…ふふ、その悲しい思い出から逃れるため、記憶を消し、新しい星でやり直そうとしたわけか」
   琴菜の、織田先輩の、超研の仲間たちの顔がはるかの脳裏に浮かぶ。
はるか「ううっ…」
巨大ハルシジニア「だがそれも気休めにしかすぎんぞ。どんなにお前が地球人たちを愛そうが、その愛も友情も希望も、いつかは必ず時の流れの中に消えて行くのだ。同じ事の繰り返しだ」
はるか「(思わず耳をふさぎながら)やめてえええええ!」
巨大ハルシジニア「あがいても無駄だ。ピンキーゼブラも死に、お前は宇宙で一番孤独な存在になったのだよ。スターピンキーQ!」
巨大ハルシジニア「そう、お前の一番恐れている物。それは“孤独”だ!」
はるか「(絶望的な悲鳴)あああああああああああああ!」
巨大ハルシジニア「(心の声)いいぞ! もっと恐怖と、絶望と、悲しみの精神エネルギーを放出するのだ」
ゼブラの声「(小さく)…負けるな」
はるか「えっ?」
ゼブラの声「負けるな、孤独に負けるな!」
ゼブラの声「…君は強い。悲しみを、恐怖を克服できる」
はるか「…ゼブラ」
ゼブラの声「…超人の、スターピンキーの誇りを失うな!」
   巨大ハルシジニアに向け、顔を上げるはるか。
巨大ハルシジニア「(はるかの変化に気付き)むっ!」
はるか「甘く見ないで! 私は孤独に負けるほど弱くない!」
はるか「確かに、愛も友情も、大宇宙の時の流れの中では、一瞬のきらめきなのかもしれない。…でもね、だからこそ、その光は美しく貴重なのよ!」
はるか「スターピンキーの本当の使命は、そのはかなくも美しい“光”を守る事よ」
はるか「その為に、私のこの力はある!」
   ぐっと拳を握りしめる星野はるか。その体にはエネルギーが満ち満ちている。
巨大ハルシジニア「そ、そんな馬鹿な! あれだけ精神エネルギーを吸い取ったんだ。もうお前に戦う力など残っているはずが…」
はるか「(ピンキーアイを通して、マリオンに通信を送る)マリオン、聞こえる?」
マリオンの声「はい、キャプテン!」
はるか「私の現在位置は把握してるわね。ピンキースーツを転送して!」
マリオンの声「はいっ!」

○基地最上階
   大事に抱えていたスーツの入ったトランクを開けるマリオン。
   (トランクの内側には転送用のメカが詰まっている)
マリオン「(てきぱきと操作しながら)転送!」

○指令室
はるか「装着!」
   まばゆいばかりの光に包まれるはるか。
巨大ハルシジニア「ぬおおおおお、こ、これはっ!」
   シャキーーン! 久々にピンキースーツを装着したはるかの雄姿!
Q「スターピンキーQ・パーフェクト!」
巨大ハルシジニア「…こ、こんな事がぁ〜〜っ!」
Q「あんたのおかげですべてを思い出したわ。これはそのお礼よ」
Q「Qフラッシャー!」
巨大ハルシジニア「ぐああああああっ!」
   ズバーーーン! はるか、いやスターピンキーQの必殺技を受け、無様に倒れる巨大ハルシジニア。
   Q、瀕死のハルシジニアの前に立ち、
Q「わかった? 宇宙にこのスターピンキーQがいる限り、お前たち邪悪なカンブリア星人が栄える事は無いのよ」
巨大ハルシジニア「…くくっ、邪悪なカンブリア星人か。それもいいだろう」
巨大ハルシジニア「だが本当に、我々が悪で、お前が正義だと言えるのかな? 我々は食料と、新たな生存圏を求めて地球へ来ただけだ。生き物としては、当然の権利だろう?」
Q「ああ、そうね」
   ドガッ!
   そう言いながらバトンを巨大ハルシジニアの頭に突き立て、とどめを刺す。
Q「…わかってるわよ、それくらい。ダテに二万年も生きちゃいないわ」
Q「嫌な事ばっかし思い出させやがって…」
   戦いの興奮も醒め、勝利の後の虚しさを味わうはるか。

○同
タルト「おねーさまぁ!」
   タルト、マリオン、それにシルルとデボンの4人が駆けつける。
Q「すべて終わったわ。マリオン、そこの壁の向こうを調べてみて!」
マリオン「はい、キャプテン!」
タルト「あれぇ? なんだかおねーさま、ちょっと変わったみたい…」
   マリオン、Qに言われた通り指令室の壁を崩す。
シルル「わわっ!」
   そこはカンブリア星人の巣になっていて、部屋一面に卵が産みつけられている。
シルル「なにこれ? カンブリア星人の卵ぉ?」
デボン「そうみたいッスね」
Q「マリオン、その卵には奴らの栄養分である、精神エネルギーがたっぷりと蓄えられている。それを原料にすれば、地球人たちを元に戻す特効薬が作れるはずよ」
マリオン「はい、わかりました、至急製作に取りかかります」
タルト「おねーさま! 記憶が戻ったんですね!」
タルト「わーいわーい、昔のカッコイイおねーさまだぁ」
Q「それは違うわ、タルト」
タルト「え?」
Q「昔に戻ったんじゃない。新しい私に変わったのよ」
   顔を上げるQ。彼女の中で何かが吹っ切れ、すがすがしい表情に。

○地球
   青く輝く地球全景。
N「こうして地球は、スターピンキーQの活躍により、元の平和を取り戻したのであった」

○エピローグ
はるか「行ってきまーーーす!」
   タルト、マリオンに見送られ、元気に自宅を飛び出すはるか。
   そして学園、笑顔で迎える琴菜や織田先輩。超研の仲間たち。
   戻ってきた平和な日々。

○ラストのコマ
   ボロボロになった月面基地や破壊されたメガモンスを修復している新オルドビス兵たち。
シルル「休戦は終わりよっ! 私はまだあきらめたわけじゃないんですからねー」
シルル「今に見てらっしゃい、スターピンキーQ!!」
デボン「(呆れて)まだやる気ッスかぁ?」

                       <THE END>


》》》戻る