第1話「ええっ!私が宇宙の勇者なの?」


○宇宙
N「宇宙歴30741年、悪の天才・シルル女王に率いられたオルドビス帝国は、銀河系の統一という野望を掲げ、各惑星に対し、侵略戦争を開始した。帝国の圧倒的な軍事力と電撃作戦の前に、長い間の平和に油断しきっていた惑星同盟側は、なすすべもなく敗退を続け、いまやオルドビス帝国の勝利は目前に迫っていた。だが!」

帝国兵A「女王陛下、第47前線基地からの連絡が途絶えました!」
シルル「なんですって!」
帝国兵B「第6艦隊の消息も依然不明のままです」
シルル「…まさか、これもあいつの仕業だって言うの」
  SE:爆発音2回
帝国兵A「味方3番及び6番艦、消滅!」
シルル「くっ!」
  SE:爆発音多数
帝国兵A「陛下! 残っているのはもう本艦だけです!」
シルル「…じゅ、13隻の戦闘母艦がわずか数分で!」
シルル「くううっ、あの女一人の為に、このオルドビス大銀河帝国が敗北すると言うのか!」
  SE:爆発音
帝国兵B「第二装甲板大破! 艦橋に侵入者!」
Q「はぁ〜い! シルル女王」
シルル「…お、お前は!」
N「そう! 強大なオルドビス帝国に、ただ一人、敢然と立ち向かった無敵の超人がいた! 彼女の名は…」
Q「スターピンキーQ!」

○オープニング
   主題歌流れる。

○サブタイトル
はるか「第1話・ええっ! わたしが宇宙の勇者なの?!」

○宇宙
シルル「この私が、お前ごときに負けてたまるかぁーっ! 行くぞ、スターピンキーQ!」
N「怒りに燃えるシルル女王は、超合金ソードを抜いてスターピンキーQに襲いかかった!」
Q「ピンキーバトン!」
   SE:シュン!(バトンの伸びる音)
   SE:チャンバラ音
Q「その程度じゃ、私は倒せないわよ。シルルちゃん」
シルル「ば、馬鹿にするなーーっ!」
   SE:カシーン(剣がはじき飛ばされる音)
シルル「しまった! 剣が…」
   SE:ピピピピピピピピピ(通信音)
マリオン「キャプテン、爆破装置セット完了しました」
Q「はーい、ご苦労様。マリオンR」
Q「ピンキーボード!」
   SE:シュン(ボードの飛んでくる音)
   SE:スタッ!(Qがボードに乗る音)
Q「グッバーイ、シルル女王。長いつきあいだったけど、あなたとも今日でお別れね」
   SE:ピンキーボード飛行音
シルル「あ、こら待て! 逃げるのかスターピンキーQ!」
   SE:チッチッチッ…(時限装置の音)
シルル「えっ?」
   SE:大爆発音!

○スターブリーム号・コクピット
   SE:ピッ(レーダー音)
マリオン「キャプテン、シルル母艦の破壊を確認しました」
Q「…ふぅ。これでオルドビス帝国との戦いも終わったわ」

○宇宙
N「…こうして、さしものオルドビス帝国も、スターピンキーQの活躍により壊滅したかに思えた。だが、シルル艦の破片に混じって、宇宙を漂う一つのカプセルがあった。その中には!」
シルル「…こ、このままで済むと思うなぁ。スターピンキーQ!」
シルル「おぼえてろぉぉ! この恨み、必ず晴らしてやるからなーーっ!」
   (少し間)
N「そして、またたく間に3年の月日が流れた…」

○地球・はるかの住む町
N「ここは、東京近郊の典型的なベッドタウン」
   SE:ドアの開く音
はるか「行ってきまーーす!」
N「一軒の家から飛び出してきた元気いっぱいの少女。彼女こそ、この物語の主人公・星野はるか。私立見城学園中等部に通う、ごく普通の中学三年生である」
はるか「琴菜、おっはよーー!」
琴菜「あ、はるかちゃん。おはよう」
はるか「あれぇ、琴菜。その手に抱えてる本、昨日図書室で借りてったやつでしょ。もう読んじゃったのぉ?」
琴菜「うん、面白い本だったから、つい一晩で読んじゃった」
はるか「スゴイなぁ琴菜は。あたしだったら、そんな分厚い本、読むのに1ケ月はかかるわ」
琴菜「でも、その方が正しいわ。本はね、じっくり味わって読んだ方がいいんだもの」
はるか「えへっ、そーお?」
   SE:キーンコーンカーン…
はるか「あ、予鈴だ。急ごう、琴菜。遅刻しちゃマズイもんね」
N「だが、そんな平凡な一中学生としての日常も、今日で最後になろうとは、この時の星野はるかには知る由も無かった。」

○宇宙・小惑星
N「一方その頃、宇宙では…」
   SE:兵士たちの歓声
シルル「オルドビス大銀河帝国兵士諸君!」
シルル「あの屈辱の日から3年…。長かった。ほんっとーーーに長かった! でも、やっとここまでこぎつけたわ!」
シルル「偉大なるオルドビス大銀河帝国、宇宙艦隊の復活よっ!!」
シルル「我々の目的はただ一つ、再びこの手に銀河の覇権を取り戻す事!」
兵士たち「シルル・ド・オルドビス女王陛下、バンザーイ! バンザーイ!」
シルル「まずは憎っくきスターピンキーQを、血祭りにあげてやるわっ!」
デボン「あーーー、陛下。その事なんスけど…」
シルル「む、デボン参謀か。何の用?」
デボン「スターピンキーQならとっくに引退して、今は行方知れずだそーで」
シルル「引退ぃぃ!?」
デボン「はぁ、ワシらオルドビス軍をやっつけた事で安心したんでしょうな。普通の静かな生活をしたいとかゆって、辺境の惑星で隠居してるって噂ッスよん」
シルル「けっ! 自分だけ幸せになろーったって、そーはいかないわよ! この私がいる限りねっ!」
シルル「偵察機を出せ! 28チクタク以内にスターピンキーQを探し出すのよ。いいわね!」
帝国兵A「はっ、お任せを! 偵察艦隊、発進!」
   SE:円盤発進音

○宇宙
帝国兵A「第21偵察隊はセルベス恒星系を。第22偵察隊はピロレフ星近辺を捜索せよ! 我が第1偵察隊は第82恒星系へ向かう」
   SE:円盤飛行音
帝国兵B「第82恒星系? えらくまた辺境ですね」
帝国兵A「身を隠すには、最適の場所と思わんか?」
N「オルドビス軍の言う第82恒星系…、それは我々の太陽系の事である」

○見城学園・体育館
   (体育の時間。バスケットボールをやっている)
   SE:ボールのバウンド音や走る音、生徒たちの歓声など。
琴菜「はるか、パスッ!」
はるか「ほいっ!」
はるか「行くぞーーっ! それっ、シュート!」
   SE:ボールがカゴに入る音。
   SE:ピピーーッ!(笛の音)
琴菜「すごーい。今日3本目じゃない」
はるか「なんか調子良くってさ。いい感じ」
琴菜「いっその事、バスケ部に入っちゃえば? はるかちゃんって運動神経抜群なんだし…」
はるか「あー、それパス。部活とかで縛られるのヤダし。あたし、気楽な方がいいもん」
琴菜「才能あるのに、もったいないなぁ」
   SE:生徒たちのザワザワ声。
はるか「あれ、何だろ。みんな窓の所に集まっちゃって」
琴菜「ねぇ、どうしたの? え、空に何か浮かんでる?」
   SE:円盤浮遊音
はるか「わっ! あれUFOじゃない?」
琴菜「えーっ!」

○偵察機コクピット
   SE:ピュイーーン、ピュイーーン(センサー音)
帝国兵B「隊長! 高レベルの精神エネルギー反応があります」
帝国兵B「見て下さい、この波形を。これはピンキー星人特有の物です」
帝国兵A「うむ、私の読みは正しかった様だな」
帝国兵B「女王陛下に報告しますか?」
帝国兵A「まだだ。報告は確かなものでなくては」
   SE:生徒たちザワザワ声
帝国兵B「あ、地球人に気付かれてしまったようです」
帝国兵A「よし、夜まで待機。透明シールドを張れ!」
帝国兵B「はっ!」

○体育館
   SE:ピュイーーン!(透明シールド音)
はるか「あー、消えちゃった」
琴菜「本当にあれUFOなのかしら」
はるか「さぁ〜? でも、珍しいモン見れてなんか得した感じ」

○宇宙
N「その頃、広大な宇宙空間を疾走する、一隻の高速宇宙船があった」
タルト「大変だわ、大変だわ!」
   SE:スターブリーム号飛行音
タルト「おねーさまにお知らせしなくっちゃーっ!」

○はるかの家
   SE:バタン!(ドアを閉める音)
はるか「ただいま〜、ママ。」
母親「おかえりなさい、はるか。」
母親「ちょうど良かったわ。今、紅茶を入れたところなの。マロンケーキもあるわよ」
はるか「ひょお!」
   SE:もぐもぐ…(ケーキを食べる音)
はるか「あ、そうだママ。今日ねぇ、学校でUFO見たんだよ」
母親「まぁ、UFO?」
はるか「あれって、やっぱし宇宙人の乗り物なのかしら? 琴菜は『気球かなんかの見間違いよ』とか、夢の無い事言ってたけど」
母親「はるかはどう思うの?」
はるか「うーーーん、やっぱし宇宙人が乗ってるって方が面白いかな」
母親「それじゃ、ママもはるかに賛成よ。そうそう、今日の夕食はあなたの好きなパエリアにしますからね」
はるか「わーお!」
母親「それからねぇ、ちょっとコレ見てくれない?」
   SE:バサバサ(紙をめくる音)
はるか「ん? ハワイにグアムにオーストラリア…。どうしたの、旅行パンフばっかりこんなにいっぱい?」
母親「今度の夏休みはどこへ行く? はるかの好きな所に連れて行ってあげるわ」
はるか「あのねぇママ。前から気になってるんだけど…」
母親「なぁに、はるか?」
はるか「あたしが言うのはなんだけど、ママって少しあたしを甘やかしすぎじゃないかな。このままじゃきっとロクな大人になんないよ」
母親「そんな事ないわ。どんなに甘えても、わがまましてもいいのよ。あなたはここでの余生を充分に楽しむ権利があるわ。だってそれだけの功績があるんですもの」
はるか「…へ?」
母親「さーて、夕御飯の支度しなくちゃ」
はるか「うちのママって、ときどき変な事言うなー」
   SE:キーーーーーーーーーーーーーーーーン(しだいに大きくなる)
はるか「ん、何の音?」
   SE:ドカーーン、バリバリバリ!!
はるか「きゃーーーーっ!」
母親「はるかちゃん、大丈夫! 何があったの?」
はるか「…う、うちの屋根に何かが墜落したみたい」
   SE:ハッチの開く音
はるか「きゃっ!」
   SE:ボタッ!(スライム落下音)
N「はるかの家に墜落した謎の物体の中から、スライム状の奇怪な宇宙生物が出現した!」
はるか「やだ! なによコレ?」
   SE:ズルルルル(スライム移動音)
はるか「きゃあああ! こっち来ないでえぇ!」
タルト「おねーさま、久しぶりに会ったのにそれは無いですぅ」
   SE:シュワワワワワワワ!(スライム変化音)
N「驚くべし! 宇宙生物はみるみる内に可憐な少女の姿へと変化した」
はるか「こ、こんな事って…」
タルト「おねえさま! 大変なんですよ。あのシルル女王が生きてたんです!」
はるか「は?」
タルト「それでそれで、宇宙艦隊を再結成して、おねえさまに復讐するっていきまいてるんです!」
タルト「この星にもいずれオルドビス軍がやってきますよ。早く迎え撃つ準備をしなきゃ!」
はるか「ちょ、ちょっと待ってよ、何の事だかさっぱしわかんないわ。だいたい、あんた誰?」
タルト「何言ってるんですか、タルトPですよタルトP! 忘れちゃったんですかぁ?」
タルト「……ん? あ、そうか。この星に来る時に記憶を消したんでしったけ」
はるか「記憶を消した?」
タルト「いいですか! おねえさまの本当の名前は『スターピンキーQ』 天下無敵・宇宙最強のスーパーレディにして銀河系の救世主!!」
はるか「すたあぴんきぃ・きゅうぅ?」
タルト「あーーもう、じれったい! タルト説明したりするのって苦手。ねぇマリオンRぅ、あなたから言ってやってよぅ」
母親「そうですね。もうお芝居は終わりにしましょう」
N「と、言うが早いか、はるかの母親は一瞬にしてラバー製の外装を脱ぎ捨て、金髪のアンドロイドへとトランスフォームした!」
はるか「マ、ママっ!」
   SE:マリオン・チェンジ音
マリオン「お久しぶりです。キャプテン・スターピンキーQ。私はアンドロイドのマリオンR」
はるか「ええええええええーーーーーっ!」

○はるかの家の上空
   SE:円盤浮遊音
帝国兵B「見て下さい! あそこに墜落しているのは、スターピンキーQの乗機・スターブリーム号です」
帝国兵A「よし、降りるぞ!」
   SE:円盤降下音

○はるかの家
はるか「……ど、どういう事か説明して!」
マリオン「はい、キャプテン。かつてこの銀河系は、悪の天才・シルル女王に率いられたオルドビス帝国によって征服されようとしていました。帝国の侵略に、いくつかの星々は抵抗を試みましたが、圧倒的なオルドビス艦隊の前に次々と敗れ去っていきました」
マリオン「このまま銀河系はオルドビス帝国に支配されてしまうのか? だがその時、宇宙の勇者・スターピンキーQがシルル女王の野望の前に、敢然と立ちはだかったのです!」
マリオン「たった一人でオルドビスの大艦隊を全滅させるという、スターピンキーQの超人的な活躍によって帝国は崩壊。宿敵シルル女王を倒し、全宇宙に愛と平和を取り戻したのでした」
はるか「ほーー」
マリオン「その後スターピンキーQは、戦いの疲れを癒すため、辺境の惑星・地球で陰遁する道を選びました。今までの記憶を消し、姿も変え、平凡な女子中学生・星野はるかとして、第二の人生をスタートさせたのです」
マリオン「しかし、その平和な日々も今日で終わりです。再びスターピンキーQとして全宇宙の平和を守る為、戦う時が来たのです」
はるか「んな事急に言われたってぇ! だいたいいきなりそんな話されたって、信じられるわけないじゃ……」
はるか「待てよ…。そう言えば、あたしには中学校以前の記憶が無い…」
はるか「それに…、父親がいないってのも、変だなーとは思ってたんだよね」
マリオン「ご理解いただけましたか」
N「その時である!」
   SE:バーーン!(ドアを蹴破る音)
マリオン「はっ!!」
帝国兵B「うっ、マリオンR! それにタルトP!」
帝国兵A「という事は。間違いない、こいつがスターピンキーQだっ! 撃て撃てっ!」
   SE:銃声
マリオン「キャプテン、あぶない!」
(マリオン、すばやくはるかの楯となる)
   SE:ビシッ! ビシッ!(銃弾をはじく音)
はるか「ひええっ! だ、大丈夫なの?」
マリオン「これくらいの攻撃なら平気です」
帝国兵B「くそっ!」
帝国兵A「ひるむな。ピンキーチームを倒せば、大手柄だぞ!」
タルト「なーに言ってんのよ。あんた達にやられるわけないでしょ!」
   SE:ぐにょーーーん!(タルト変形音)
N「不定形生物であるタルトPは、体を自由に伸ばす事ができるのだ」
タルト「タルトちゃんパーーンチ!」
   SE:ボカッ!
帝国兵B「う、なんて長いリーチなんだ…」
   SE:ドタッ(兵Bがダウンする音)
タルト「へへっ、もんだどんだい!」
帝国兵A「おのれぃ!」
マリオン「キャプテン、これを!」
はるか「これは…?」
マリオン「あなたの武器、ピンキーバトンです」
   SE:ピキーーン!(何かが頭の中でひらめいた音)
はるか「この感触。……なんだろう、とても懐かしい感じ」
帝国兵A「隙あり! たあーーっ!」
   (帝国兵A、剣を抜いてはるかに襲いかかる)
   SE:カシーン!(剣がはじき飛ばされる音)
帝国兵A「ぬうっ!」
はるか「行ける!」
   SE:シューーン!(バトンのエネルギーの上昇音)
はるか「必殺、ピンキークラッシュ!」
   SE:ドガッ!(命中音)
帝国兵A「ぐわーーーーーっ!」
   SE:ドタッ(兵Aがダウンする音)
帝国兵A「…さ、さすがはスターピンキーQ。私ごときがかなう相手ではなかったか」
帝国兵A「ふふっ、まぁいい。偵察機、自動帰還にセット!」
   SE:カチッ(スイッチ音)
マリオンR「しまった!」

○外
   SE:円盤飛行音
マリオン「バストミサイル、発射!」
   SE:ミサイル発射音
   SE:ミサイルが空中で炸裂する音
   SE:円盤飛行音
マリオン「はずしたか…」
マリオン「これでこの星に我々がいる事を、シルル女王に知られてしまった…」
はるか「…って事は?」
マリオン「新たな戦いの始まりです、キャプテン」
はるか「ええ〜っ?」
タルト「でも、またおねえさまに一緒に戦えて嬉しいでーーす!」
マリオン「ピンキーチームの復活ですね、キャプテン!」
はるか「はぁ…」

N「こうして宇宙の勇者スターピンキーQは、今、華麗な復活を遂げた。だが、Qへの復讐に燃えるシルル女王との戦いは、まだ始まったばかりなのだ。がんばれ星野はるか! 戦えスターピンキーQ! オルドビス帝国から銀河の平和を守れるのは君だけだ」


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