#9「エルデの思い出」(95/03/21)


○宇宙
   スターブリーム号とシルル母艦の、スターウォーズ調の大追撃戦。
シルル「絶対逃がすもんですか!! 撃て撃てーっ!」
   ビームを撃ちまくるシルル母艦。ひらりとかわすスターブリーム号。
   急旋回してレーザー砲発射!
   シルル母艦に命中。が、バリアがダメージを吸収してしまい効果は無い。

○スターブリーム号・コクピット
   操縦席に座っているはるか。
はるか「ちっ、バリアか…」
はるか「それはそうと、そこで吐かないでね」
   コクピットの後ろに、宇宙酔いでフラフラのケインがうずくまっている。
はるか「…ったく、だらしないわねぇ」
ケイン「す、すまない…」
マリオン「それは酷と言うものです。こんな急激なGの変化に耐えられるのはピンキー星人くらいのもんです」
はるか「あ、そう?」
タルト「そうよ! おねーさまの操縦、乱暴なんだもん」
   タルト、既に人間の形状を保てなくなり、壁に押しつけられてはりついている。
はるか「参ったなぁ。このままシルル女王をエルデ星まで引き連れてくわけにもいかないし…」
マリオン「キャプテン、私にいい考えがあります」

○スターブリーム号・下部ブロック
   マリオン、はるかを緊急脱出カプセルに押し込める。
はるか「せ、せまいよぉ、苦しいよぉ」
マリオン「少しの間です。辛抱して下さい」
   マリオン、脱出カプセルのの操作板をいじりながら、
マリオン「自動コースセレクト12・89、エルデ星にセット!」
マリオン「発射!」

○宇宙
はるか「わーーーーーーーーっ!」
   スターブリームから撃ち出された脱出カプセル。
   カプセルとは逆方向に反転して加速するスターブリーム。
シルル「待てーーーっ!」
   スターブリーム号の方を追っていくシルル母艦。
   猛スピードで宇宙空間を突進していく脱出カプセル。
はるか「ひええええーーーっ!」

○エルデ星・山中
   ぎゅーーーーーん!
   大気圏突入時の摩擦熱で真っ赤に燃え上がったカプセル。
   ずどーーーーん!! 山中に墜落。
はるか「きっつう…。フツーの人間だったら絶対死んでるよ」
   フラフラ状態で、カプセルから這い出すはるか。

○同
はるか「ここがエルデ星ね…」
   山の上に立つはるか。眼下にエルデ星の町並みが広がっている。

○エルデ星・市街地
   キョロキョロとあたりを見回しながら歩くはるか。
   古いデザインのビル。路上を走る市電。三輪オートに似たトラック。
   まるで昭和30年代の日本の様。なんとなく郷愁を誘う雰囲気。
   (ただし看板とかはエルデ星の文字)
はるか「この星、地球に似てる…」
   商店街に入っていくはるか。貸本屋や駄菓子屋などもある。
はるか「なんだか懐かしい感じ…。ここが私がかつて暮らしていたトコかぁ」
はるか「そうか! だから私は隠居先をこの星に似た地球にしたのかも…」

○同・住宅地
   住宅地の中にあるちょっとした空き地。
   紙芝居屋のまわりに子供たちがたかっている。
   後ろからそっとのぞき込むはるか。
紙芝居屋「さあさあ、今日の紙芝居はご存知『ピンキー戦士物語』だよ!」
はるか「(心の声)…えっ!」
紙芝居屋「さてさて、今からざっと2万5千年前。サンザー恒星系ピンキー星に滅亡の危機が迫っていた。突如発生したブラックホールに、ピンキー星は飲み込まれようとしていた!」

○紙芝居の内容
紙芝居屋「だがピンキー星人たちは、その優れた科学力によって、『アンチブラックホール波』を発射するピンキータワーを建設。タワーの力で、ピンキー星は消滅の危機から救われたのでありました」
紙芝居屋「さらに! この事がピンキー星人の体に予期せぬ副作用をもたらした。なんと『アンチブラックホール波』に含まれていたデファレーター線によって、すべてのピンキー星人が、不死身の肉体を持つ『超人』に進化してしまったのであーる!」
紙芝居屋「ピンキー星人たちは、その『超人』としての力を全宇宙の平和の為に使う事を誓い、ここに宇宙警備隊を組織された!」
紙芝居屋「その宇宙警備隊の中でも、特に優秀な戦士にのみ与えられるのが『スターピンキー』の称号だ。で、今日はその『ピンキー戦士物語』の中から、『スターピンキーQ』のお話を…」

○同・空き地
   ドシン!
   紙芝居に見入っているはるかに、突然子供がぶつかって来る。
はるか「あたっ!」
   振り向くと、数人の子供たちが遊んでいる。
   子供たち、はるかに構わず遊び続ける。
男の子「(悪役のお面を付けている)わはははははは、このドクロ魔王が、貴様ごときにやられるものか!」
女の子「宇宙の勇者、スターピンキーQ参上!!」
   なんと、子供たちは「スターピンキーQごっこ」をしているらしい。
女の子「逃がさないわよ! ピンキーボードぉ!」
   男の子Aが逃げるのを、手作りのスケボーで追いかける女の子。
   調子に乗って、スケボーのまま積んである土管の上に上がって行くが、バランスを崩して転倒する。
はるか「あぶない!」
   はるか、とっさにパッと飛び、女の子の体を受けとめる。
はるか「ダメよ、気をつけなきゃ」
女の子「ありがとう、おねえちゃん」
はるか「ところで、今やってたのは『スターピンキーQ』ごっこ?」
女の子「うん、そうだよ。私、スターピンキーQ、だーーーい大好き!」
女の子「悪者や宇宙怪獣の侵略から、何度もエルデ星を救った正義のヒロイン!」
男の子「でもさぁ、スターピンキーQってオルドビス戦争の後、ずっと行方不明なんだぜ。もう死んじゃってんじゃないかなぁ」
女の子「そんな事無いもん! スターピンキーQは不死身だもん!」
   女の子、泣きそうな顔になる。
男の子「(困って)…あ、ごめんごめん。そうだよね」
はるか「本当にスターピンキーQが好きなのね」
女の子「うん! なんてったって、強いてカッコよくて、それに美人だし!」
   はるか、ちょっと赤面する。
紙芝居屋「さてさて、卑劣なドクロ魔王の罠にかかったスターピンキーQの運命やいかに? いうわけで今回はここまで! じゃ、続きはまた明日ね」
はるか「…しまった! 見逃しちゃった」
女の子「ねえねぇ、おねえちゃん、よその星から来た人でしょ?」
はるか「え、わかる?」
女の子「うん。着てる服とか、ちょっと違うもん」
はるか「へえぇ、なかなかスルドイじゃん」
女の子「おねえちゃんもスターピンキーQが好きなの?」
はるか「そうそう、ここがQが昔暮らしてた星って聞いてね。観光がてらにちょっと…」
女の子「じゃ、もう記念館には行ってみた?」
はるか「記念館!?」

○記念館
   煉瓦作りの古い建物。
女の子「ここが『スターピンキーQ記念館』よ。私、ここに来るの32回目!」
はるか「こんな物まであるなんて…」

○同・ホール
   記録映画が上映されている。
映画ナレーション「こうして、銀河系の平和は宇宙警備隊の活躍によって保たれていた。だがある日! 事故か、あるいは邪悪な宇宙人の陰謀か? ピンキータワーの制御装置が暴走し、あっという間にピンキー星はブラックホールに吸い込まれてしまったのである」
映画ナレーション「突然の出来事に、脱出できたピンキー星人はごくわずか。しかも広い宇宙に散り散りになってしまったのである。ここに宇宙警備隊は、その栄光の歴史に幕を閉じた…」
映画ナレーション「そしてスターピンキーQは、長い放浪の果てにこの星へとたどりついた。その後、Qはエルデ星を第二の故郷として、凶悪な侵略者・ドクロ魔王から我々を守る為、戦い続けてくれたのである。ありがとう、スターピンキーQ!」
   映画終わる。
はるか「…はぁ、なるほどねぇ」
女の子「おねーちゃん、次はこっちこっち!」

○同・展示室
   かつてのQの写真や、使用していた武器らしい物が展示されている。
はるか「(心の声)ダメだなぁ。何も思い出せないや…」
   …と、一枚の写真パネルの前で足が止まる。
   写真には一人の男性の顔が写っている。
   どことなく、織田先輩に面影が似ている。
   説明文が付いているが、エルデ語なので読めない。
はるか「これは?」
女の子「ああ、Qの恋人だった人よ」
はるか「恋人…。この人、今はどこに?」
女の子「ううん。もうとっくに死んじゃったって話よ」
   はるか、写真を見ている内になぜか涙がこぼれてくる。
女の子「あれ、おねえちゃん。どうして泣いてるの?」
はるか「…わからない、でも」
   ズズーーーン!!
   その時! 激しい地響きを立てて記念館の壁が崩れ落ちる。
女の子「きゃあああ!」
   はるか、さっと女の子をかばう。
シルル「いたわね! 私からは逃げられないわよ!!」
   目前に小型メガモンスに乗ったシルル女王が!!
はるか「シルル女王! どうしてここに!?」
シルル「ふん! あんな幼稚な手に引っかかるもんですか」
シルル「その上、このサイコブロスはESP増幅装置付きの最新型でね。一発であんたの居場所を探知できたってわけ」
   シルル、あたりを見回して、
シルル「ふーーん、ここがあんたの記念館ってわけ。生意気な!」
シルル「ちょうどいいわ、この記念館にあんたの死体を展示してあげる。サイコアターック!!」
   シルルのESP攻撃! 破壊される記念館。
はるか「あっ!」
   シルルのメガモンス・サイコブロスがさっきの写真パネルを踏みつけている。
   その事がはるかの怒りに火を付ける。
はるか「許さない!」
   さっとピンキーバトンを抜くはるか。
ナレーション「ピンキー星人星野はるかは、激しい怒りによって興奮状態に達した時、大脳からミラクル物質ピンキナドリンが全身に放出され、超人パワーを発揮する事ができるのだ!! GO! スターピンキーQ!!」
驚く女の子。
女の子「うそ!? あのおねえちゃんがスターピンキーQだったの??」
   はるかとシルルの激しい戦い。
シルル「今日こそ決着を付けてやるわ! サイコキネシス・フルパワー!!」
   シルルの念力によって動きを封じられるはるか。
はるか「な・に・よ…。こんなものーーっ!!」
シルル「馬鹿な! あたしの力を最高に増幅してるのにぃ!」
   バシッ! バシッ!
   ESP増幅装置がオーバーヒートして火花を飛ばしている。
はるか「もらったぁ! ピンキークラッシュ!!」
   どかーーん! 爆発するサイコブロス。

○同・記念館の外
シルル「うっ!」
   倒れているシルルにバトンを突きつけるはるか。
   見上げるシルル。はるか、憤怒の表情。
   そのはるかの姿に過去のスターピンキーQの姿がダブる。
   #7の時の恐怖を思い出し、怯むシルル。
はるか「なぜ? どうしてあんたはそんなにしつっこいのよ!」
はるか「銀河系の征服? 好きにすればいいじゃない。私は地球で静かに暮らせればそれでいいの。あんな辺境の星、あなたにとっちゃ価値は無いんでしょう?」
はるか「それともあのケインの事? 彼なら喜んであんたに譲るわよ。今の私は彼の事、好きでも何でもないんだから」
はるか「だからもう、わたしに構わないでよ!!」
   シルル、はるかの剣幕に半泣き状態。ついつい本音が出る。
シルル「…だ、だってあんたは最高の敵なんだもん。あんたと戦えないんじゃつまんないじゃない!!」
はるか「つまんない??」
   過去の思い出を語り出すシルル
シルル「オルドビスの女王になってから、いろんな星を侵略して来たけど、私の才能と超能力があれば、どこも簡単に征服できちゃったわ」
シルル「最初はそれも面白かったけど、だんだん退屈になってきたの。そんな時よ、あんたが私の前に現れたのは…」
シルル「あんた程、手強くて、ワクワクさせてくれる相手は他にいなかった。私の全能力を振り絞って、それでも勝てない唯一の敵…」
シルル「だからあんたが引退したって聞いた時、なんだか裏切られたみたいな気がしたわ…」
はるか「裏切られた…?」
シルル「苦しい思いをして帝国を復活させたのも、本当はもう一度あんたと戦いたかったからなのよ。あんたにはわからないかもしれないけどね」
シルル「…ふっ、でもまた負けちゃったか。さ、やんなさいよ」
はるか「…………………………」
   はるか、スッとバトンを納める。
女の子「どうしたのスターピンキーQ? シルル女王にとどめを刺さないの? チャンスなのに…」
はるか「なんだか、その気が無くなっちゃった…」
シルル「!?」
   その時、上空にゼブラの宇宙船が。
はるか「ピンキーゼブラ! どうしてここに!?」
デボン「女王陛下〜〜っ!!」
シルル「デボン!」
   はるかの一瞬の隙を付き、デボン参謀の高速艇がシルルをマジックハンドで救出して逃げ去って行く。
はるか「あっ! しまった!」
   サッとはるかの前に降り立つゼブラ。
ゼブラ「構うな。それよりもっと重大な事がある。スターピンキーQよ、地球に危機が迫っている」
はるか「えっ!」
ゼブラ「奴らが…、カンブリア星人がついに動きだしたのだ!」
はるか「カンブリア星人??」
   上空からスターブリーム号が降下して来る。
タルト「おねーさまぁ!」
ナルーカ「ミス・Q!」
ゼブラ「迎えが来たようだな。急ぐがよい」

○エルデ星・空
   はるかを乗せ、飛び立つスターブリーム号。
   寄り添うように飛ぶゼブラの宇宙船。
   手を振る女の子。
女の子「さようなら! スターピンキーQ」
女の子「やっぱりスターピンキーQは生きてたんだ。今でも宇宙の平和を守る為に戦ってるんだ」
   満足そうな表情の女の子。
N「はたして、ゼブラの言う地球の危機とは何か? 急げスターブリーム号! そして物語は新たな展開へ。だが、この続きはまたの機会にお伝えしよう。ではさらば読者諸君!!」


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