眠田直のこんなモノが欲しい!(13)

過ぎ去りし夏のおもいで



 ……夏、それはオタクな人間にとってもっとも忙しい季節だ。JAFCON、ワンフェス、キャラクターショー、毎週の様に行われる有明ビッグサイトのイベント。
 その合い間にはアメリカ版ゴジラやディープインパクト、それにわめき騒ぐガキどもに混じって「ポケットモンスター/ミュウツーの逆襲」を観る。おお、幻の怪獣映画「プルガサリ」も公開か…。え? キネカ大森での単館上映なの? 電車を乗り継いで大森へと向かう。
 3日間に及ぶ肥大したコミケット。ある者は印刷所とスリリングな入稿の駆け引きをし、ある者はコスプレの衣装制作に追われ、またある者はコンビニのコピー機の前で、ギリギリの時間まで粘って同人誌を作る。
 流れ落ちる汗。たまっていく疲労。失われる体力。あのくそ重い電話帳のようなコミケットカタログを手に、灼熱地獄の場内をただひたすら面白いホンを求めてさまよう。
 コミケ前後に上京してくる友人たち。それにあわせて行われる通信仲間のオフ会。アニカラで一晩中で歌って声も枯れた後、案内してまわる迷宮のような中野ブロードウェイ。小さなビル群の階段の上り下りで足が棒になる秋葉原。
 これだけではない。東京ドームのウルトラマンフェスティバル。後楽園ゆうえんち野外劇場のギンガマン夏の公演。セーラームーンミュージカル。「幻想軌道」のコンサート。
 そしてSF大会。少しは寝ておくつもりが、ボルテージが上がって、夜っぴて騒いでしまう合宿の夜。朦朧としたアタマに響く翌日のトンデモ本大賞。珍奇な本たちの電波な文章も疲れた身体には今は心地よく…。

 ふと考える。
 オレはいつからこんな夏の過ごし方をするようになってしまったのだろう?
 昔、夏の日はもっと輝いていた。
 子供の頃、セミ取りやザリガニ釣りで近所の森や小川を駆けめぐっていたあの頃。
 中学の部活の仲間たちと行った海水浴やキャンプ。
 市民プールでの微笑ましいデート。彼女の水着姿がまぶしかったっけ。
 花火大会の夜、浴衣姿のあの子とファーストキス。
 もう、濃ゆい同人誌もレアなフィギュアもLD−BOXもいらない。
 今はただ、あの頃のような輝く夏が欲しい。

 なーーーーんてな。ウソだよ。今の方が楽しいよ。根っからオタクだからな。
 今年の夏はいまさらながら「すごいよ!!マサルさん」「はれときどきぶた」にハマり、「めそ」のぬいぐるみ(一部のゲーセンのUFOキャッチャーにしか無い)やはれぶたグッズ(博品館と原宿キディランドにしか置いてやがらねぇ!)などを求めて徘徊し、34歳の夏も大馬鹿な過ごし方をしたオレ。


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