眠田直のこんなモノが欲しい!(54)

テレビニヤッテキタ



 君は「トータリースパイズ」を観たか?

 ほとんど事前告知もされぬまま、テレビ東京系土曜朝という、中途半端な時間に始まったこの海外アニメ。いやいや、意外な掘り出し物でありました。

 ビバリーヒルズの高校に通う一見平凡な女子高生クローバー、アレックス、サムの三人組。しかし彼女たちの正体は秘密組織「ウープ」のエージェント。毎回ボスのジェリー(声:小林清志)の強引な指令の元、スパイアイテムを使って世界平和を守るために戦うのだ! …という、まぁチャーリーズエンジェルとパワーパフガールズとセーラームーンを足して、三で割り切れなかったよーな内容。
 ここでなぜセーラームーンを引き合いに出したかというと、コレ、ものすごく日本アニメの影響化にある作品なのだ。まずデザインが完全に「日本的美少女キャラ」だし、漫符的表現や表情の崩し方なんかもモロ日本風。センス的には80年代レベルなんで、ちょい古い感じもするが大目に見よう。なんたって動画枚数は日本より贅沢でよく動くしな。
 一方、セリフ回しや急展開なストーリーは、完全にカートゥーンの世界。ああ、このテンポはミュータントタートルズやトランスフォーマーだよねぇ。和洋折衷のイイとこ取りで面白いのだ。この「面白い」というのはちょっと「珍味」的な面白さではあるけどね。

 しかし最近のアメリカ人ったら、本当に日本アニメ好きなのね。…と、思ったらなんとフランス作品。まぁフランスも日本アニメ大好き国の一つだったっけ。
 なるほど。「ビバリーヒルズ高校」つーベタな設定とか、クローバー達が学校で授業受けてるより、やたらダンスパーティーにばっかり行ってると思ったら、これはあくまで「フランス人の目から見たアメリカン」だったのね。微妙にバカにしてやがる…。
 一方、日本に対してはかなり敬意を払ってるみたい。第1話の冒頭からして「東京のレコード店」から始まるし、製作元のMARATHONのホームページでは、日本放映を記念して、和服姿の三人と番宣コピー「テレビニヤッテキタ」をわざわざカタカタで書いてくれてるぞ。変な日本語が味わい深い。

 それにしても、だ。アート系はともかく、こと商業アニメの世界では、ポケモン・ドラゴンボール・ジブリ作品の日本と、ディズニー・ワーナー・ハンナバーベラを擁するアメリカの、二大国が強力すぎて他の国のアニメ産業がなかなか育たなかったのだが(ただしその二大国を支えてるのは韓国だけど)、ここへ来てフランスの「トータリー」に「オギー&コックローチ」、カナダの「アンジェラアナコンダ」、ドイツの「ネッズニュート」、スペインの「スーパーモデル」など、他の国々からも様々なアニメが出てきたのは嬉しい。どれもアメリカ市場を意識しすぎて、今一つお国柄が出てないとか、残念な部分もあるんだけど、私としては暖かく見守って行きたい。

 だってさ、いつかはこの辺から、日米アニメには無い斬新な傑作が産まれてくるような予感がするからだ。いやぁ、楽しみだねぇ。


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